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グリーンランド北西部カナック周辺での雪氷観測2023

雪氷課題の研究チームは、グリーンランド北西部カナック周辺の氷床上(SIGMA-A)と氷床から隔絶された氷帽上(SIGMA-B)の2カ所に自動気象観測装置(Automatic Weather Station: AWS)を設置してデータを取得しています。昨年に引き続き、研究チームのメンバーが現地を訪れ、AWSの更新作業やメンテナンス、周辺での気象・雪氷物理観測を行います。活動の様子を写真と共にお伝えします。

北西グリーンランド氷床上SIGMA-Aサイトにおける現地観測

執筆者:庭野 匡思(気象研究所/国立極地研究所)

ArCS II 戦略目標①「先進的な観測システムを活用した北極環境変化の実態把握」の雪氷課題のグリーンランド観測チームは、2023年6月21日から27日にかけて北西グリーンランド氷床上SIGMA-Aサイトに滞在して観測研究活動を行いました。もともと、本観測は2021年に実施することが計画されていましたが、COVID-19の影響を強く受けて、2年間延期されていました。今回、満を持して、本観測に臨みました。氷床へのアクセスには、Kenn Borek Air社(カナダ)のツインオッターを利用しました(写真1)。

(写真1)SIGMA-Aサイトへの到着時の様子

滞在期間中には、新しい自動気象観測装置(Automatic Weather Station; AWS)を設置することができた(写真2)他、各種雪氷現地観測、GPS測量、およびドローン撮影などを実施しました。

(写真2)今回設置したAWSの前での集合写真

完成したAWSは、気圧、雪面上3 mと6 mの気温・湿度・風向・風速、3深度の雪温、上向き・下向きの短波・長波・近赤外放射量などを測定しており(写真3)、アルゴス衛星通信を介して準リアルタイムにデータ送信を行っています。近年のグリーンランド氷床では様々なプロセスが複雑に絡み合って雪氷質量損失が急速に進行しており、結果として海水準上昇を引き起こすなど全球気候システムに重大な影響を与えています。今回設置したSIGMA-A AWSは、急速に変化している氷床の物理状態に関する観測ベースの貴重な情報を提供してくれると期待されます。

(写真3)完成したAWSとSIGMA-Aサイトの全景

(2023/7/5)

ArCS II雪氷課題サブ課題1観測チーム全員合流

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

集合した観測チームメンバー。後発隊の到着に食卓を囲む。

6月14日、雪氷課題の2023年度グリーンランド雪氷気象観測チームのメンバーが無事全員集合しました。写真右から、大河原 望(気象研)、山崎 哲秀(アバンナット北極プロジェクト)、庭野 匡思(気象研)、島田 利元(JAXA)、砂子 宗次朗(防災科研)、西村 基志(極地研)の6名です。

観測拠点の居住スペース
観測拠点のキッチン

カナック村に置かれた拠点にはキッチンや人数分のベッドも完備されており、快適な居住環境が整備されています。この拠点で1カ月以上共同生活をしながらグリーンランド氷床上や氷帽上での現地観測、観測機材の設置、メンテナンスを協力して行います。

観測拠点のダイニングスペース

現在は今年の最も大きなミッションである内陸氷床上での気象観測機器(SIGMA-A)設置に向けて、着々と準備を進めています。

(2023/6/20)

SIGMA-Bサイトにおける自動気象観測装置(AWS)のメンテナンスとデータ収集

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

SIGMA-Bサイトへの道中、カナック氷帽を歩く
SIGMA-B AWSの様子

SIGMA-Bサイトは、北極圏における重要な気象観測サイトの一つで、ArCS IIプロジェクトで設置された自動気象観測装置の一つがあります。今回は約1年ぶりの訪問で、メンテナンス作業を行いました。
観測チームは、交換が必要とされた気象センサーを迅速かつ正確に取り外し、新しいセンサーを取り付けることで、装置のパフォーマンスを向上させました。また、バッテリーの充電状態や通信機能など、他の機能にも注意を払いながら、装置全体の機能を確認しました。

SIGMA-Bメンテナンス
メンテナンス作業終了後の集合写真

メンテナンス作業が完了した後、カナック氷帽の気象観測を再開し、今後もモニタリングを継続します。これらのデータは、北極域における気候変動やその他の環境要因の研究において重要な役割を果たします。また、このデータは国際的な科学コミュニティと共有され、地球規模の気候モデルの改善にも貢献できると期待されます。

SIGMA-BのAWSデータは北極域データアーカイブシステム(ADS)で公開しています。

(2023/6/13)

2023年夏の観測開始!

執筆者:西村 基志(国立極地研究所)

ArCS II雪氷課題のサブ課題1気象・雪氷チームによる2023年のグリーンランド現地観測が開始されました。チームは6月7日にグリーンランド北西部にあるカナック村へ到着しました。このカナック村を拠点として約2カ月にわたる調査・観測を行います。

海氷と犬ぞりと氷河

現在は村に滞在しながら今後の調査の準備を進めているところですが、今日は海氷や村の様子を見に行きました。一面氷に覆われた海の景色と対岸に見える氷河は何度見ても圧倒されます。

カナック村の様子

(2023/6/10)

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