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アラスカ南東部タク氷河における氷レーダーを用いた氷厚調査

若手人材海外派遣プログラム参加者:2023年度第1回短期派遣
佐藤 健(北海道大学)

2023年6月24日から7月20日にかけて、アラスカ大学南東校を訪問し、同大学のJason Amundson准教授らが実施するジュノー氷原タク氷河での野外観測に参加しました(写真1)。また、観測後は大学に滞在し、データ解析や観測結果に関する議論、研究発表などの活動を行いました。滞在の最大の目的は、氷レーダーに関する自身の修士課程研究の推進です。

(写真1)タク氷河の観測に参加したメンバー
(写真2)氷レーダー調査の様子

タク氷河が位置するジュノー氷原では、氷河の融解および後退が加速しています。その中で、タク氷河は周辺の他の氷河とは異なり、2015年まで前進していました。また、タク氷河の基盤は柔らかく、氷河の流動とともに基盤を削ります。このようにタク氷河はユニークな氷河であり、タク氷河の氷河変動を理解することで、潮汐氷河の変動の理解を進められると考えられます。

タク氷河の現地観測では、アラスカ大と北大の共同で複数の項目を実施しました。私は、氷レーダーを用いた氷厚観測を担当しました(写真2)。氷レーダーでは、直接観測の難しい氷の厚さや氷河内部/底面の環境について、電磁波を用いることで連続した氷厚および氷河内部/底面データが取得できます。タク氷河では、氷レーダーによる氷厚データが不足しており、氷の厚さ分布や氷河変動の理解は遅れています。今回の観測では、タク氷河末端において21測線(総長約10 km)の氷レーダー観測を実施することができました。この観測データは潮汐氷河の変動の理解を進めるのに、大いに役に立つと考えられます。

(写真3)アラスカ大学南東校の構内
(写真4)現地観測データに関する議論の様子

続いて、アラスカ大学および滞在地ジュノーについて紹介いたします。ジュノーは山と湾に囲まれた自然豊かな地域で、滞在中は多くの観光客を見かけました。アラスカ大学南東校は、そんな美しい自然の中に位置しています(写真3)。滞在中は同大学の会議室の一室をお借りし、現地で取得したデータの解析を行いました。また、Amundson准教授をはじめとするアラスカ大の観測チームのメンバーと議論を交わす機会があり、互いの観測データを紹介し、意見交換を行いました(写真4)。今後は、氷レーダーのデータ解析をさらに進めると同時に、現地で測定された流動速度データ、高解像度DEMデータと合わせて検討を進めることで、タク氷河の変動特性の理解に繋げていく予定です。

最後になりますが、今回の派遣では多くの成果を上げることができました。ArCS II若手人材海外派遣プログラムのご援助、そしてサポートいただきました関係者の皆様には深く感謝申し上げます。

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