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UCLAでの北極ダストに関する研究交流・共同研究

若手人材海外派遣プログラム参加者:2023年度第1回短期派遣
河合 慶(名古屋大学)

世界中の乾燥地から放出されるダスト(黄砂など)は、太陽光を散乱・吸収したり、雲粒・氷晶の核(雲凝結核・氷晶核)として働いたり、海洋生態系に栄養塩を供給したりすることで、地球の気候や環境に影響を与えています。近年、北極の陸域では、温暖化によって夏季に積雪が完全に融解する場所が増え、その露出した地表面からダストが放出されています(以下、北極ダストと呼びます)。しかも、このような地表面から放出される北極ダストは、氷晶核として働く能力が非常に高いことが実験から示されています。私は、この実験結果を全球気候モデルに導入し、現在気候での数値シミュレーションを行うことで、夏から秋の北極域の下層雲(高度約0~3 km)において、北極ダストが氷晶核として非常に重要な役割を果たすことを明らかにしました。北極域では、全球平均の約2~4倍の速度で温暖化が進行しており、北極ダストの放出量や気候影響の長期変動について、さらに研究を進める必要があります。

(写真1)UCLAのキャンパス内の様子
(写真2)UCLAで使用したデスク

そこで、ArCS II若手人材海外派遣プログラムにより、アメリカ・ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA・写真1)を訪問し、ダストの放出や気候影響に関する最先端の研究を行っているJasper Kok教授と約4週間、研究交流・共同研究を行いました。1週目には、Kok教授と打ち合わせを2回行い、北極ダストの放出量や気候影響の長期変動に関する共同研究として行うシミュレーションの設定や期間について議論しました。毎週木曜日に行われているグループミーティングでは、博士課程の学生の研究発表を聞き、Kok教授のグループが現在進めている研究テーマについて知ることができました。研究室では、私のデスクとPCモニターを用意していただき、快適な研究環境を構築できました(写真2)。2~4週目には、Kok教授から提供していただいたダスト放出量データを全球気候モデルCAM-ATRASに導入し、様々な設定でシミュレーションを実行しました。その結果や問題点について、毎週、Kok教授と打ち合わせを行いました。グループミーティングでは、私の最近の3つの研究成果について発表し、意見交換を行うことができました。

私にとって、約1カ月間の海外滞在は初めてだったため、研究面だけでなく、生活面・人生面でも貴重な経験になりました。このような機会を与えてくださったArCS II若手人材海外派遣プログラムや関係者の皆様に深くお礼申し上げます。

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