スウェーデンでの研究交流
若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
本間 朝香(名古屋大学)
北極域研究加速プロジェクト (ArCS II) の若手人材海外派遣プログラムの一環として、2024年8月25日から9月19日にかけてスウェーデン気象・水文研究所(SMHI)に滞在して研究交流を行いました。
滞在中は主にHYPEという水文モデルの勉強を行いました。HYPEは、河川流域をさらに細かい流域に分割し、その各流域において土地利用や土壌種類によって異なる計算内容でシミュレーションを行うため、非常に観測値と整合性の高い流量等のシミュレーションをすることができます。私はロシアにあるレナ川の河川水がどのように形成されているのかを研究しているため、流域中でどの地域の流量が大きいのかをシミュレーション可能なHYPEは非常に役立つものでした。また、モデルを勉強していく中で、土壌中ではどのような流出機構があるのか、モデルではどのような点で実際との不確実性を大きく持つのか、など水文学的な知見も得ることができました。現在も、HYPEによって自分の研究をさらに向上させることができるように試行錯誤を続けています。また、研究所に滞在している間のセミナーでは、研究紹介をする機会を設けていただきました。初めての英語での質疑応答等は緊張しましたが、多くの研究者の方から様々なフィードバックをいただき、今後の研究を進める上で非常に参考になりました。
加えて、スウェーデンとフィンランドの国境にあるトルネ川という河川のフィールド調査にも同行しました。このフィールド調査では河川流量を観測することが目的であり、実際の測定方法を体験することで研究の手法の深い理解に繋がりました。また、トルネ川は私の研究対象地域であるレナ川よりは小さい河川ですが、日本にはないような大河川でした。そのため、現状はレナ川を訪れることはできないのですが、今回のフィールド調査でレナ川がどのような河川なのかイメージすることができました。
滞在を通して、海外の研究機関に滞在して日常的に受入研究者と議論したことや、大自然の中で泥だらけになりながらフィールド調査を行ったことは自身の研究の向上にも貢献しましたし、海外で研究を行うという意味でも非常に良い経験となりました。