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アラスカ内陸部永久凍土上疎林における細根深度分布調査の実施

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
甘田 岳(森林研究・整備機構)

若手人材海外派遣プログラム短期派遣支援により、2024年8月26日~9月25日にかけてアメリカ合衆国のアラスカ大学フェアバンクス校に滞在しました。

今回の滞在では、永久凍土融解に対する植物の応答メカニズムを明らかにすることを目指し、細根(直径2 mm以下の細い根)の深度分布の評価を行いました。温暖化が急速に進む周北極域では、永久凍土の融解が進行しています。この時、永久凍土融解に最も敏感に反応するのは、凍土面近くまで根を深く張っている植物種であることが近年の研究から指摘されています。しかし、細根の種識別は非常に難しいことから、永久凍土植生の細根深度分布を種レベルできちんと評価した研究はほとんどありませんでした。そこで本プログラムでは、アラスカ内陸部において永久凍土上の典型的な植生であるクロトウヒ疎林(写真1)を対象に、細根の深度分布調査を実施しました。

(写真1)典型的な永久凍土上のクロトウヒ林

研究サイトはアラスカ大学フェアバンクス校が管理するポーカーフラットリサーチレンジ観測サイトにおいて行いました。ここはアラスカ大学や日本の海洋研究開発機構の研究者らが気象や永久凍土の観測を行っているサイトです。この観測サイトの主要な植生であるクロトウヒの疎林において10か所の小サイトを設営し、永久凍土面付近まで深さ10㎝毎に土壌コアを採集しました。採集した土壌コアは実験室に持ち帰り、①細根種識別用、②細根量測定用、③土壌栄養分析用の3つに分けました。①と②では、ピンセットを用いて土壌から細根を丁寧に全て取り出しました。大体1サンプルに2~3時間もかかるほど大変手間のかかる作業となりました。その後、①の細根はアラスカ大の遺伝子分析に詳しいDiana Wolf氏とNaoki Takebayashi氏に引き渡し分析を依頼し、②の細根は乾燥させ保存しました。③に関しては、正規の手続きを踏んで日本へ輸入し、現在栄養分析を進めています。

(写真2)土壌採集風景

今回実施した調査は大変手間と時間がかかり、少なくとも1か月は現地滞在が必要となるものでした。今回、ArCS IIの海外派遣プログラムに採択していただけたことで、資金面に不安を覚えることなく、腰を据えて調査に専念することができました。心より感謝申し上げます。

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