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プロジェクト報告・成果

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国際若手研究者交流プログラム 海外若手研究者活動報告

重点課題①国際若手研究者交流プログラム 海外若手研究者公募では、北極域研究に関わる海外若手研究者の日本国内の機関における雇用もしくは受入を促進し、海外若手研究者の研究の進展を支援すると同時に、我が国における北極域研究者と海外若手研究者との相互交流の活性化や国際共同研究の協力体制強化を目指しています。本プログラムにより来日した海外若手研究者による活動報告を掲載します。

カナック氷帽上で発生する生物暗色化現象の観測と解明

受入研究者:大沼 友貴彦(宇宙航空研究開発機構)
海外若手研究者(執筆者):Giacomo Traversa

本課題(Biological Darkening over the Qaanaaq ice cap:BDQ)では、グリーンランド北西部にあるカナック氷帽の氷河を黒くさせている雪氷生物と呼ばれる有機物を、衛星リモートセンシング、現地観測、数値モデリングを用いた学際的な手法で分析します。
このアプローチは、近年の雪氷生物による氷河の暗色化を評価し、その氷河や周辺環境への影響の理解を深めるための基礎となります。

さようならの時

日本での2カ月が過ぎ、もうさようならを言う時が来ました。残念なことに時間が経つのは早すぎますが、これはお別れではありません。

ArCS IIはイタリアからとても遠い国で一定期間を過ごし、素晴らしい経験をするというとても良い機会を提供してくれました。この経験は研究者としての私を確実に成長させてくれました。わずか2カ月の間に、私の研究分野での多くの著名な研究者や教授に会う機会があり、将来的には彼らと共同研究ができることを願っています。それだけでなく、北海道大学や千葉大学、気象研究所、国立極地研究所など多くの機関を訪問する機会がありました。各地を飛び回り、新しい基礎的な共同研究を構築するために多くの労力を費やしましたが、私たちはBDQプロジェクトの研究目標のほとんどを達成し、将来の共同研究や科学論文の基礎となる優れた成果を得ることができました。

このような素晴らしい結果を出すことができたのは、ArCS IIプロジェクトや、私を支え、助けてくれたすべての方々のおかげだと改めて感謝しています。帰国してからも一緒に仕事を続けていくことを楽しみにしています。

ありがとうございました。
Giacomo

(写真1)3月28日のJAXAでのお別れ会にて、私と大沼さん
(写真2)つくばのJAXAセンターの入口にて、地球観測研究センターのグループ写真

(事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(2024/3/29)

立川の国立極地研究所でのセミナー

日本での滞在も半分以上が過ぎ、3月6日に立川にある国立極地研究所(NIPR)でセミナーを行う機会を得ました。つくばからかなり長い旅(電車で2時間以上)の後、研究所に到着し、青木博士に会って研究所を紹介していただきました。NIPRの矢吹 裕伯博士が開催した「北極域データアーカイブシステム(ADS)」についての有益なセミナーを受けた後、午前11時からはNIPRの研究者の方々に、私の研究内容とBDQプロジェクトの最新情報を発表しました。セミナーはすぐれた意見が出た有益な質疑応答で終了しました。

その後、NIPRの研究者たちと一緒に楽しい昼食をとり、青木博士と西村博士の案内で近くにある南極・北極科学館を訪ねました。NIPR訪問の最後には、青木博士と意見交換を行い、共同研究の可能性について話し合いました。

(写真1)NIPRでのセミナーの冒頭で私を紹介する青木博士
(写真2)青木博士と私。南極・北極科学館の入口には有名な日本の第1次南極観測隊のタロとジロ、そして犬のチームの像がある。

(事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(2024/3/11)

つくばの気象研究所での会合

2月22日の午後、私たちはJAXAからほど近いつくば市の気象研究所(MRI)に移動し、MRIや他の機関の研究者との会合を行いました。

この会合では将来の共同研究を視野に入れて日本の研究者へ私自身の研究を発表し、これまでに得られたBDQプロジェクトの最近の暫定的な結果を紹介しました。この機会に有益で貴重なアイディアや提案が生まれました。私の発表の後、谷川 朋範博士と青木 輝夫博士からも発言があり、研究テーマのすり合わせについて話し合いました。

会合後は皆でレストランへ移動し、和やかな雰囲気の中で非常に楽しい夕食をとりました。

(写真1)つくば市の気象研究所の玄関にて、私と西村 基志博士、有江 賢志朗博士
(写真2)私の発表後の意見交換

(事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(2024/2/26)

千葉大学理学部地球科学科での氷のサンプル分析

最初の数週間にJAXAで実施したデータ準備と予備解析が終わり、BDQプロジェクトに転機が訪れました。今月、私は千葉大学理学部地球科学科に計5日間滞在し、竹内 望教授率いる生物地球化学グループと共同研究を行いました。初日の2月14日のミーティングでは私のこれまでの研究やBDQプロジェクトについて発表し、研究グループとの交流やコラボレーションの可能性について話し合いました。

そしてついに2023年8月のカナック氷河でのフィールド観測で私が採取した氷河氷のサンプルを分析する機会を得ました。これらの分析結果はプロジェクト継続の鍵となるため、BDQプロジェクトにおいてとても重要なステップです。具体的には、細胞の識別を手助けする蛍光顕微鏡を使用し、採取したサンプルに含まれる生物物質(主に藻類)の量を推定することができました。大沼博士と竹内教授のグループによる初期研修の後、私は分析を開始し21日水曜日に分析を終えました。

これらの分析結果は対応するフィールドおよび衛星の波長別反射率観測と比較され、北極の氷河上にいる藻類の存在を遠隔から自動検出するために必要な新しい手法の基礎となります。今回得られた分析結果は心強いものであり、私はプロジェクトを継続し、この研究分野における将来の共同研究に向けて千葉大学の生物地球化学グループと協力する準備ができました。

(写真1)千葉大学理学部地球科学科の研究室にて、竹内教授によるサンプル分析の研修
(写真2)カナック氷河で採取された氷サンプルに含まれる雪氷藻類(Ancylonema nordenskioldiiは緑褐色、Sanguina nivaloidesは赤色)の顕微鏡写真

(受入研究者・事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(2024/2/21)

北海道大学低温科学研究所への出張

日本での滞在2週間目、札幌にある北海道大学を訪問する機会を得ました。

(写真1)北海道大学低温科学研究所の入口
(写真2)大沼博士、杉山教授、今津さんとジンギスカンレストランで夕食会

大沼博士と一緒に2月7日の朝に東京を出発し、お昼に札幌に到着しました。街はすっかり雪で覆われていましたが、寒さと裏腹にとても美しかったです。午後には大学の低温科学研究所にて、グリーンランド北西部の氷河学の専門家であり、カナック地域で多くの現地観測を実施してきた杉山 慎教授のグループと充実した会合を行いました。1日の締めくくりはラム肉を使った地元料理「ジンギスカン」を味わう夕食会でした。とても美味しかったです!

翌日は杉山教授のグループと今後の共同作業やコラボレーションについて話し合い、BDQプロジェクトエリアでの私たちの予備的な調査結果について共有しました。夜は自由時間を利用して街を散策し、雪や氷の彫刻が街のあらゆるところに飾られる地元の雪まつりを見に行きました。

(写真3)杉山教授と彼のグループとの会合で自身の研究について発表をする私
(写真4)さっぽろ雪まつりの雪の彫刻

9日金曜日は、杉山教授や彼のグループ、札幌の町に別れを告げ、東京に戻る時になってしまいましたが、重要な共同研究につながるであろう新しいコラボレーションを始めることを楽しみにしています。
(事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(2024/2/9)

いよいよ日本へ出発

私はイタリアのポスドク研究者のジャコモ トラヴェルサです。ArCS II海外若手研究者公募プログラムにより、つくばにあるJAXAで2カ月間、同機関や千葉大学、北海道大学の研究者と共同研究をする素晴らしい機会を得ることができました。

イタリアのミラノからほど近い小さな町、故郷のブルゲーリオを2024年1月28日に出発し、1時間のフライトでローマに到着しました。旅の詳細を計画しながら待つこと3時間、ついにアジア経由の南ルートで約12時間の東京行きフライトに乗りました。

(写真1)手荷物を預けた後、イタリアを出発
(写真2)つくば到着後の最初の一歩は早くも私を待ち受けているものを思い起させた

翌日1月29日に日本に到着し電車に揺られること1時間半、とうとうつくばに到着しました。今はプロジェクトを始めるのが楽しみでなりません。滞在中にまたレポートをお届けします!
(事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(2024/1/30)

極域の超⾼層⼤気で⽣じる電離⼤気流出現象の観測的研究

受入研究者:小川 泰信(国立極地研究所)
海外若手研究者(執筆者):Lindis Merete Bjoland

本課題では、北欧のEISCATスバールバル・レーダーによって蓄積された観測データベースの解析や、新規運用を開始するEISCAT_3Dレーダーを組み合わせ用いて得られるデータ解析を行う予定です。これにより、北極圏超高層大気の流出にとって重要なパラメータの一つである両極性電場の特性を理解することを目的としています。

レーダーによる極域大気の研究

国立極地研究所での最初の1カ月間が終わりを迎えました。今回のレポートでは、日本での滞在中に取り組んでいることについてもう少し紹介したいと思います。

極域では電離大気(イオン)が上層大気から宇宙空間に流れ出します。このプロセスは極風と呼ばれ、主に「両極性電場」によって上層大気からイオンが上昇し、磁気圏に流出すると考えられています。この流出したイオンは、短時間のスケールでは宇宙天気現象に影響を与え、長期間のスケールでは大気の進化に影響を与えると考えられます。その重要性にもかかわらず、両極性電場の基本的な特徴は十分に理解されていません。そこで私のプロジェクトでは、北極圏の北緯78度に位置するEISCATスバールバル・レーダーから得られた上層大気の物理量データを用いて、様々な条件下における両極性電場やイオン上昇流の詳細解析を実施します。それにより、両極電場や極風に影響を与える要因を理解することに繋がります。

また、温室効果ガスの増加に伴い、地表付近の大気が温暖化している一方で、高層大気は寒冷化しています。この寒冷化は高層大気の収縮を引き起こし、高層大気中で生じている各種のプロセスに影響を与える可能性があります。そこで、極風の研究と並行して、高層大気の冷却が極域大気における各種の物理量やプロセスにどのような影響を与えているかについても調査しています。この研究でもEISCATレーダーの長期観測データを利用しています。

これまでのところ、私は日本での滞在を非常に楽しんでいます。今後私のプロジェクトとその結果について、もっと皆さんと共有できることを楽しみにしています。
(受入研究者・事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(写真1)私のオフィスからの素晴らしい富士山の眺め

(2024/2/16)

日本での1年に向けて

私の名前はリンディス ビョランドです。ArCS IIの海外若手研究者公募プログラムで、国立極地研究所の研究者と共同研究を行うために来日する機会を得ました。

(写真1)ベルゲン空港でスーツケースを預ける準備完了
(写真2)雪のヘルシンキ空港に到着。マイナス18℃。

2つのスーツケースに荷物を詰め、2024年1月4日に故郷のノルウェー・ベルゲンを出発しました。フィンランド・ヘルシンキへの2時間のフライトの後、数時間の乗り継ぎ時間を経て、ヘルシンキから東京までは直行便で約13.5時間のフライトでした。フィンランドから日本へのフライトでは北極点を通過しました!

(写真3)北極点上空を通過したことを証明する証明書を手に入れた

ベルゲンを出発してから約24時間後、5日の夕方にようやく国立極地研究所に到着しました。これからプロジェクトに取り組むことを楽しみにしています。また日本での滞在中の活動を報告します!
(事務局による日本語訳 ※原文はこちら

(2024/1/9)