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プレスリリース 著者からのメッセージ
— ArCS IIニュースレターNo.1より —

ArCS II ニュースレター No.1では「北極域研究の最前線」として、プレスリリースに関して研究者からのコメントを掲載しました。研究にかけるご自身の思いやこれからの展望、こぼれ話など、短いコメントの中にも研究への情熱が感じられます。
※所属はニュースレター発行時の情報です。

北極海の冷水の起源はシベリアにあった!

川口 悠介
(東京大学 大気海洋研究所)


今回、シベリアとアラスカの間の狭い海峡部(アナディル海峡)が北極海に流入する熱量をコントロールするという事実を発見しました。この調査は、日本の「みらい」とロシアの「マルタノフスキー号」という二つの船を用いて実現したものです。北極研究において、シベリア圏などロシア領域に関係する未解決な課題はたくさんあります。ロシアとの友好な協力関係の中で、これらの謎を解き明かしていくことが、日本が世界から求められている役割と感じています。

論文タイトル Cold Water Upwelling near the Anadyr Strait: Observations and Simulations
掲載誌 Journal of Geophysical Research – Oceans
掲載日 2020年9月17日
著者 Yusuke Kawaguchi, Jun Nishioka, Shigeto Nishino, Shinzou Fujio, Keunjong Lee, Amane Fujiwara, Daigo Yanagimoto, Humio Mitsudera, Ichiro Yasuda
DOI https://doi.org/10.1029/2020JC016238

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氷河のポンプがフィヨルドの豊かな海洋生態系を支える

漢那直也
(東京大学 東京大学 大気海洋研究所)


海水が湧き上がる氷河の末端近くにはアザラシが集まってきます。また、たくさんの海鳥が氷河の末端を周回し、海中の餌に目を光らせています。海の表層で植物プランクトンが行う基礎生産は、フィヨルドの食物連鎖の出発点に当たります。氷河の融解がきっかけで、海水が湧き上がるというユニークな仕組みが、その基礎生産を支えています。本研究により氷河の新しい魅力を発見することができました。

論文タイトル Iron supply by subglacial discharge into a fjord near the front of a marine-terminating glacier in northwestern Greenland
掲載誌 Global Biogeochemical Cycles
掲載日 2020年9月28日
著者 Naoya Kanna, Shin Sugiyama, Yasushi Fukamachi, Daiki Nomura, Jun Nishioka
DOI https://doi.org/10.1029/2020GB006567

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北極海へ流入する暖かい河川水が北極海の海氷減少と気温上昇に影響する

朴 昊澤
(海洋研究開発機構 地球環境部門)


北極河川が冬季に結氷して春に融解する、そのプロセスが河川流出に及ぼす影響を評価する研究を進める中、海氷に対する河川水熱の影響に関するアイデアを得ました。そこから海洋、陸、大気の研究者と議論し、論文になるまで5年かかりました。まさにArCS IIプロジェクトが取り組んでいる異分野融合研究の成果と言えます。温暖化の進行によって永久凍土から河川を通して北極海に流入する有機物の増加による海洋酸性化の促進が予想されるため、今後それを明らかにしていきたいです。

論文タイトル Increasing riverine heat influx triggers Arctic sea-ice decline and oceanic and atmospheric warming
掲載誌 Science Advances
掲載日 2020年11月7日
著者 Hotaek Park, Eiji Watanabe, Youngwook Kim, Igor Polyakov, Kazuhiro Oshima, Xiangdong Zhang, John S. Kimball, Daqing Yang
DOI https://doi.org/10.1126/sciadv.abc4699

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太平洋側北極海の昇温と結氷遅延メカニズムの一端を解明

小平 翼
(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)


私は2019年に初めて北極航海に参加させていただきました。北極は、想像していたほど寒くはありませんでしたが、想像以上にダイナミックな場所でした。特に氷縁域と呼ばれる場所が印象的で、雪や風、海面の波、海氷、それぞれが時々刻々と異なる様子を見せていて、それらを観察・記録する時間は非常に濃密でぜいたくな時間だったように思います。観測で得られた非常に貴重なデータをもとに、新たな知見や手法の構築に挑戦します。

論文タイトル Record high Pacific Arctic seawater temperatures and delayed sea ice advance in response to episodic atmospheric blocking
掲載誌 Scientific Reports
掲載日 2020年11月27日
著者 Tsubasa Kodaira, Takuji Waseda, Takehiko Nose, Jun Inoue
DOI https://doi.org/10.1038/s41598-020-77488-y

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