研究課題(3)

北極温暖化のメカニズムと全球気候への影響:大気プロセスの包括的研究

研究代表者:浮田 甚郎(新潟大学)

計画概要

大気は、海洋、雪氷、陸域生態系と共に北極気候システムを構成しています。近年の北極温暖化はこのシステム全体に関わる変化ですが、その中で大気は大きな役割を担っています。本研究では北極気候システムに関わる2つの課題について、 大気の視点からの理解を目指します。

1つ目の課題は、 北極域の急激な温暖化メカニズムです。20世紀前半そして近年と、この100年間で2度起きている北極の急激な温暖化は、 共にバレンツ海からシベリア沿岸にかけて顕著でした。この海域は、 中緯度から北極への熱・水蒸気の主要な流入経路に当たり、 また大気海洋間の熱交換が盛んな場所です。これらの点に注目して、 急激な北極温暖化における、北極域と環北極域の間での熱・水蒸気・物質輸送の役割の解明を目指します。また、 ブラックカーボンとも呼ばれる光吸収性エアロゾルの雪氷沈着によるアルベド低下の効果や、 エアロゾルの雲への影響とフィードバックなど、 これまで十分に評価されてこなかったエアロゾルと雲による北極域での気候変動メカニズムの定量的な評価を行います。

2つ目の課題は、北極変動・変化による全球気候への影響です。日本から見た北極のように離れた地域から大気の変動を通じて影響が及ぶことを「大気による遠隔応答」と呼びます。これは放射、エアロゾル、雲、循環などさまざまなプロセスが複雑に絡み合って生じています。寒波や冷夏など、 日本の異常気象に対しての北極の役割および遠隔応答のメカニズムを明らかにすることを目指します。

ほかの研究グループと連携して研究を進めることにより、戦略研究目標①「北極域における温暖化増幅メカニズムの解明」②「全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割の解明」および③a「北極域における環境変動が日本周辺の気象に及ぼす影響の評価」の達成に貢献します。