研究課題(4)

地球温暖化における北極圏の積雪・氷河・氷床の役割

研究代表者:榎本浩之(国立極地研究所)

計画概要

北極圏の積雪・氷河・氷床は、温暖化の影響を受けて急速な変貌を遂げています。その変動の実態とプロセスを捉え、 気圏―水圏―陸圏から成る北極気候システムにおける陸域雪氷の役割を明らかにします。

2つの課題に焦点を当てて研究を行います。1つは「環北極域における陸域雪氷の変動と北極圏気候変動への影響」。世界の氷河・氷帽の約半分が北極域に存在し、 それらは温暖化に敏感に反応します。現場観測と人工衛星データから、積雪の時空間分布や雪質、氷河の変動の実態を把握します。さらに、 気温や降雪量の変動に対する積雪の応答、アイス・アルベドフィードバックを評価し、 陸域雪氷の変動プロセスを明らかにします。また、 積雪試料の化学分析から、気温、降水量、物質輸送の空間分布を求めます。それらの情報は、 気候変動の高精度な予測に貢献します。

2つ目の課題は「グリーンランド氷床の質量変化と全球気候変動への影響」。グリーンランドの氷床は、全球の氷体積の約10%、海水準にして7mに相当します。それが急速に減少し、 減少速度は加速しています。減少の半分は融解、半分は流動によるとされていますが、その定量化が課題となっています。グリーンランドに観測網を展開し、 氷床の質量変化の現状や原因を把握します。その理解に基づいたモデルによる将来予測を行い、 氷床の縮小が気候変動に与える影響を解明します。また、氷床の縮小は海水準を上昇させ、 海洋大循環にも影響を与えることから、 海水準の変動モデルによる影響予測を行います。

これらの研究により、戦略研究目標①「北極域における温暖化増幅メカニズムの解明」②「全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割の解明」の達成に貢献します。