日本でもっとも南の図書室 —昭和基地図書—
2016年1月31日
「昭和基地図書」の全景。看板も掲げられました。
60年近い歴史があるここ昭和基地に、たくさんあるもの・・・それは、本です。インターネットが利用できるようになったのはごく最近のこと。テレビやラジオがないのは現在も同じですが、昔も今も、隊員の娯楽の代表といえば読書です。小説や実用書、漫画、それに手作りの新聞まで。毎年、隊員とともにやってきて少しずつ残されてきた、たくさんの本を見ていると、不思議とその時代の様子が目に浮かびます。
わたしたち56次隊では、昭和基地らしい蔵書を揃えた新たな図書室と管理システムを作るため、国内にいるときから準備を進めてきました。新たに国内から持ち込んだ約200冊と基地にあった約100冊を合わせた約300冊の本を昭和基地常備図書として蔵書としました。この図書には、国内で出版されている、南極・北極・高山の探検記や越冬記、オーロラやペンギン、雪氷、大気、地学など南極の科学に関する普及書や一般向け学術書がほぼ網羅されています。これらの書籍は、まもなく国立極地研究所・情報図書室のホームページでもリストを見ることができるようになる予定です。ほかにも、極地関係の学術雑誌、国立極地研究所が出版した書籍や地質図、過去の観測隊が発行してきた基地の新聞や帰国後に作られた各隊のアルバムなど、他ではなかなか見ることができない貴重な資料も揃っています。
幅6メートル、高さ3メートルの食堂の壁に備え付けられた小さな書架ですが、ここは南極や昭和基地の歴史や科学、学術成果が濃縮された空間になっています。新装した昭和基地図書の書架には、アメリカの極地探検家リチャード・バードが、『孤独』という南極越冬記の中で記した次の言葉を刻みました。
「極地生活を楽しく送ることのできるものは、冬眠中の動物が内部に蓄えた脂肪を食べて生きるように、内面に蓄えた教養を糧に悠々と暮らすことができる人たちである。」
57次隊に引き継がれた、この新しい昭和基地図書が、あるときは過去の極地や昭和基地の歴史を振り返り、未来を展望するときの資料として、またあるときは越冬隊員の生活に潤いを与え、新たな科学や教育、文化の発想を生み出す役割を果たすことを願っています。
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