三浦樹さん(以降三浦):こんにちは。鹿児島大学の三浦と申します。第12回中高生南極北極科学コンテストで優秀賞を受賞しました。今日はよろしくお願いいたします。
ーー今日はよろしくお願いします。まずは南極北極科学コンテストに応募した動機を教えてください。
三浦:当時高校二年生だったと思いますが、私はあまり高校生活を謳歌(おうか)していませんでした。このまま高校生活が終わってしまうと思い、何かアクションを起こさないと精神衛生上良くないという単純で軽率な動機から応募しました。
中高生ジュニアフォーラムでの発表の様子
中高生ジュニアフォーラムでの発表の様子
ーー三浦さんがコンテストで提案した内容を教えてください。
三浦:ある地域の大気現象が、もしかしたら遠く離れた地域の大気現象と同期していたり関係していたりすることがあるのではないかと。また、そういった影響が地球の回転軸や極域において非常に顕著に影響が現れるんじゃないかというモチベーションで提案しました。
ーーそのテーマを思いついたきっかけは何だったのでしょうか?
三浦:気象・気候に関係する物理にはもともと興味があって、そういった分野において「何か自分がアイデアを出して研究につなげることができないのかな」というような想いはずっとありました。そういったアイデアはあるような状態で、当時非常に良い機会にめぐりあうことができたという感じです。
ーー三浦さんの提案のアピールポイントを教えてください。
三浦:特定の地域の大気現象・気候がどういった要素によって引き起こされているのか、また、そういった要素は直接的で単純明快なものから引き起こされているのかということが当時から疑問でした。私が提案した内容は、時間的にも長いスケールで空間的にも遠く離れた地域において、一見すると関係がないように思えるような二つの地域の大気現象が同期しているのではないかというようなアイデアが特徴的、ユニークな点だったのかと思います。
ーーこの提案をするにあたって苦労した点などありますか?
三浦:学校の部活などで実験を積み重ねる機会があったわけではなく、ただ一人で紙に向かってアイデアを書いていたので、アイデアを出すのが大変だったと記憶しています。
ーーそれを克服するために何か行ったことはありますか?
三浦:当時から気象・気候、大気現象に関する物理には非常に興味があり、普段から科学雑誌やニュースなどを見る機会が多かったので、そこからアイデアやインスピレーションを得たと思います。
ーー今は大学生ですよね。何を研究していらっしゃいますか?
三浦:私は非線形物理学といわれる物理の分野と、気象・気候に関係する大気との横断的な領域を約4年研究しています。カオスという言葉を日常的に使われる方がいるかと思いますが、本来の意味はちょっと違います。このカオスを研究する分野が物理学にありまして、それが非線形物理学と呼ばれる分野になります。で、この非線形物理学(カオス)は、世の中のさまざまな現象の中に含まれているものでして、特にカオスに関しては大気現象に含まれていることがわかっています。
研究室にて
研究紹介映像
ーー気分転換はどのようなことをされていますか?
三浦:山登りが趣味で、高校時代も山岳部に所属していました。北アルプスなどの尾根を縦走するのが好きです。尾根へ行くまでは森の中をひたすら進むことをしなくはいけないのですが、尾根まで行くときれいな景色を見ながら歩くことができるので、自分が好きな気象や気候を身近に感じられる景色の中を歩くことが好きです。鹿児島には霧島という場所があるのですが、そこにたくさん山がありまして友達と登りに行ったりしました。非常によい場所ですね。
屋久島で登山を楽しんだ時の様子
ーーコンテストへの参加や受賞が今の自分に影響を与えていることはありますか?
三浦:そうですね。当時コンテストに提案した内容は、遠く離れた二つの地域の大気現象が関係しているのかというのがモチベーションだったんですけれども、これの本質的な物理を考えているのが非線形物理学のカオスになるので、今振り返ってみると関係していることになります。当時は高校二年生でしたが、当時と今で本質的な自分自身の興味は同じところにあるんだなと気付かされました。
ーー三浦さんは今も研究を続けられていますが、今コンテストに応募するとしたら、どんな提案をしてみたいですか?
三浦:提案したいアイデアはいろいろあるのですが、今研究しているものと同じような内容になると思います。実際に自分が作ったアイデアを、研究を積み重ねた上で、ある程度成果を出してから提案したいと思っています。
ーー三浦さんにとって中高生南極北極科学コンテストとはなんでしょうか?
三浦:私にとって中高生南極北極科学コンテストとは、『非常に肯定的な記憶』になっています。というのも、もちろん最初は科学に興味を持って始めても、その過程で、何も興味がない勉強をしなくてはいけなかったりとか、いろいろな意味で困難がたくさんあったり、自分が思い描いていたものが瓦解(がかい)する瞬間がたくさんあると思います。また、それに加えて職業としての科学というものを現実的に考えた時にも、少なくとも日本においては、あまりそれはキラキラしたものじゃないというふうに感じることがあると思います。そんな中で、自分の進路に対して何か必然性を持たせるような理由があったり、過去を振り返ったときに、ポジティブな思い出があったりするということは非常に大事だと思います。その意味において、このコンテストは私にとってとても貴重な経験で、今にも繋がっているような非常に大切な時間だったように思います。大変感謝しております。ありがとうございます。
ーーそれでは三浦さんの今後の展望を教えてください。
三浦:私は今、非線形物理学という分野と気象・気候に関する分野の横断的な領域を、非線形物理学に軸足を置いて研究しているような状態なのですが、来年以降は軸足を大気物理の分野に変えて北海道大学で研究を続けていく予定になっています。
ーーこれでインタビューを終わります。三浦さん本日はありがとうございました。
三浦:ありがとうございました。