2017年拡大期予報
2017.09.26 東京大学大気海洋研究所 木村詞明, 羽角博康
- 北極海の海氷域は拡大をはじめました。
今後、海氷域は昨年よりも速く拡大していく見込みです。
ロシア側の北東航路では10月1日頃、多島海を除くカナダ側の沿岸では10月18日頃に海氷域が沿岸に達し、航路が閉じるでしょう。
北極海の海氷域は9月13日頃に今年の最小面積に達したとみられ、現在は拡大をはじめています。今後の海氷域の拡大は昨年よりも早く進行し、ロシア側沿岸域では昨年より2週間早い10月1日頃、多島海を除くカナダ側では昨年より約1週間早い10月18日頃に海氷域が陸地に達し、航路が閉じるでしょう。
北極海の海氷面積は減少時と逆のパターンで増加していく傾向があり、早く海氷がなくなった海域(年)は、秋に海氷に覆われるのが遅くなります。そのため、ある場所での海氷のなくなる早さと秋の特定の日の海氷密接度との間には相関があります(図3)。この要因はいくつか考えられますが、早く海氷がなくなると海面がより温められやすく、秋の結氷が遅くなることがそのひとつと考えられます。そのため9月はじめの海水温と10月以降の海氷密接度の間にも相関関係が見られます(図4)。
この関係をもとに、今回の予測は2003年から2016年までの12年間(データの揃わない2011, 2012年を除く)のデータを用いて、5月1日から9月10日までの間の海氷が無かった(密接度が30%未満だった)日数と10月1日以降の日の海氷密接度との相関関係を用いて行いました。
北極海の衛星モニタリングや海氷予報、ここで用いた予測手法についてのご質問は北極海氷情報室(sea_ice@nipr.ac.jp)までお問い合わせください。
この基礎となる研究はGRENE北極気候変動研究事業から始まりました。北極海氷予測は、2015年から始まった北極域研究推進プロジェクト(ArCS)でも実施されました。