南極で見つかる岩石や隕石とそれらの年代測定

南極の岩石

南極大陸は大部分を厚い氷で覆われていますが、氷の間にわずかに露出する岩盤(露岩)から、南極大陸や地球の歴史を調べることができます。南極大陸の岩石、特に昭和基地の周辺には約5億年前のゴンドワナ超大陸の深部を構成していた岩石(変成岩や火成岩)が分布します。一部には、25億年前よりも古い地球の歴史の初期の情報を記録している岩石もあります。代表的な南極の岩石は、以下のページでもご覧頂けます。

南極大陸の約5億年前の変成岩類

セール・ロンダーネ山地の激しく褶曲した岩石

エンダビーランドの25億年前よりも古い山々

南極は隕石の宝庫!-南極で採集された隕石-

隕石はどこから来る?

隕石を見たことがありますか?

日本でも最近、街中に隕石が落ちたというニュースや、隕石が流れ落ちる時に見られる「火球」という現象がたくさんの人に報告されることもあります。

隕石は宇宙から降ってくる「天体のかけら」です。ほとんどの隕石は、火星と木星の間に散らばる「小惑星帯」というところからやってきます。天体同士がぶつかったりすると、天体の一部が弾き飛ぶことがあり、それが地球に飛んできて「隕石」になります。

中には、月や火星から弾け飛んできた、とても珍しい隕石もあります。

隕石と小惑星帯(黄色の文字はこれまでに見つかった隕石の母天体)

地球に飛んできたこれらの「小惑星のかけら」は、すべてが隕石となって見つかるわけではありません。地球の周りを取り囲む「大気圏」には空気があり、超高速で大気圏へ飛び込んできた衝撃によりこれらのかけらは、その表面が融けます。この時、燃え尽きずに地表に落下して発見されたかけらだけが、「隕石」として地球上で見つかります。

そのため、隕石の多くはその表面が融けて、「溶融皮殻(フュージョンクラスト)」という黒い皮膜に覆われています。大気圏を通り抜けて地球外からやってきたという証拠にもなります。

隕石ってどんなもの?

隕石にはいろいろな種類があります。それは、隕石がかけらとして飛び散る前の、小惑星そのもの(「母天体」といいます)にも種類があるからです。

隕石の多くは「普通コンドライト」という種類です。写真のように、小さな丸い粒が見えるのが特徴的です。JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」がサンプルを採取した小惑星イトカワはこの種類でした。

また、昨年地球に帰還した「はやぶさ2」がサンプルを採集した小惑星リュウグウは、真っ黒な岩石からなる小惑星で、有機物や水を含むと考えられています。実は隕石にもその性質によく似た「炭素質コンドライト」という種類があります。炭素質隕石が地球へ落下したことにより地球に有機物や水が供給されたとも考えられており、これからの研究が期待されています。

丸い粒がたくさん見える「普通コンドライト」

まっ黒な「炭素質隕石」

小惑星帯以外からも隕石は飛んできます。それは「月」と「火星」です。

写真のように、白っぽい部分が多く珍しい特徴のこの岩石はアポロ計画で月から持ち帰られた月の石と非常によく似ているため「月隕石」であると考えられています。

また、写真の黒くて緑っぽい色の石は「火星隕石」と考えられています。火星は月のように、人類が降り立って岩石を持ち帰られてはいませんが、この隕石に含まれる気体の組成が、火星探査機バイキングにより測定された火星大気とよく似ていることから、火星起源とされています。

他にも、小惑星の表面ではなく、内部のかけらが飛んできたと考えられる「石鉄隕石」は、鉄を主成分とする金属と、かんらん石という鉱物が混ざった構造で、その美しさはアクセサリーに加工されるほどです。

白い模様の「月隕石」

キラキラ輝く鉱物を含む「火星隕石」

金属と石が混ざった「石鉄隕石」

南極は隕石の宝庫!

南極で隕石が初めて発見されたのは50年以上前のことです。そのころ、様々な国が南極の科学調査を目的として向かい、日本も最初の「南極地域観測隊」が1956年に南極へ出発しました。
そして1969年、日本の第10次南極地域観測隊がやまと山脈周辺の裸氷帯で偶然、氷床に落ちていた9個の黒い石を発見したのです。
隕石は、表面を真っ黒な溶融皮殻で覆われているため、南極の氷の上ではとてもわかりやすく、またこの被殻は地球上の岩石には見られません。
帰国した日本の観測隊は分析の結果、これを隕石であると発表しました。
さらに、これらの偶然発見された9個の隕石には様々な種類が含まれたことから、氷床の上に落ちた隕石が氷床の流れによって集まった結果だと考えて、南極特有の「隕石集積機構」を提案しました。
これらのニュースは世界中を驚かせ、その後世界中が南極で隕石を見つけようと探査を開始しました。

氷床で見つかる隕石

隕石集積機構

日本はその後も南極における隕石探査を行い、17,000個以上の隕石を採集してきました。この中には、いまだ謎の多い隕石が多く含まれています。
これからも私たちは、世界中と協力して隕石の研究を続けながら、さらにはリュウグウから持ち帰られた岩石などの研究を一緒に行い、太陽系や地球の起源を解き明かしていきたいと考えています。

☆こちらで紹介した隕石は、南極・北極科学館で常設展示しています。

リュウグウ試料の分析準備

The☆年代測定

極地研究所には、高感度高分解能イオンマイクロプローブ、通称SHRIMPと呼ばれる大きな分析機器が設置されています。この機械で、南極や北極(グリーンランド)の岩石の中に含まれる鉱物を分析することで、「それらの岩石がいつできたのか」ということ、つまり「岩石の年代」を解明してきました。

SHRIMPでは、鉱物に0.02mm程度のイオンビームを照射し、微量に含まれるウラン(放射性同位体)と放射壊変によってできる鉛(同位体)の数を正確に数えています。放射性同位体は、同位体ごとに「放射壊変で半分の個数になるまでの時間(半減期)」が決まっています。ウランと鉛の個数から、鉱物ができてからどれくらいの時間が経ったのかを知ることができます。

今回の一般公開中に、SHRIMPをつかって南極の岩石の年代を測ります。くわしくは極地研二次イオン質量分析(SHRIMP)ラボラトリーのホームページをご覧ください!

高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP-IIe)

放射性同位体の半減期。放射性同位体は、放射壊変によって最初の個数から半分の個数になるまでの時間が同位体毎に決まっている。

鉱物のウラン-鉛年代のイメージ。鉱物中に微量に含まれるウランと鉛の同位体の個数(濃度)を測定し、半減期に応じて年代値を計算する。