大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

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所長挨拶

1957-58年に実施された国際地球観測年(IGY)から60年が経ちました。IGYで初めて参加したわが国の南極観測隊の歴史も同様に還暦を迎えることになります。一方で、わが国が北極域のスバールバル島に1991年に観測基地を構えてから四半世紀が経ちました。長い歴史を持つわが国の南極と北極の観測研究は、近年の地球環境変動や地球温暖化の研究の進展とともに、益々重要となっています。

国立極地研究所は、1973年に設置された「極地の観測と総合的研究を行う」ことを目的とした大学共同利用機関、すなわち国内共同研究や国際共同研究を通じて全国の大学の研究力強化に資するための研究機関で、情報・システム研究機構の4研究所の一つです。研究対象が極域を中心とする地球規模の環境・変動ですので、国際協力が必要不可欠となっています。国際科学会議(ICSU)傘下のSCAR(南極研究科学委員会)、IASC(国際北極科学委員会)、SCOSTEP(太陽地球系物理学科学委員会)などの学術組織の枠組みで各国と連携した観測研究を行いつつ、世界先端の「極地発」のサイエンスを追求しています。

近年の北極域での急激な海氷の減少は、我々の住む地球の環境変動が顕在化しているというだけでなく、生態系にも大きな影響を与え、また北極をとりまく広範な国々の経済・政治活動に大きな影響を与えています。一方で、北極域よりも10倍近い量の氷を有する南極大陸も変動を始めており、本格的な氷床融解が始まれば海面上昇などで人類の生存環境に甚大な影響を与えかねません。すなわち両極での変動を総合的に監視することが人類にとって急務となっています。また、氷期・間氷期の数万年以上のサイクルや過去の二酸化炭素の高濃度期など、これまでに地球環境変化の履歴を調査することは我々の地球の将来を予測する上でも欠くことのできない情報となります。北極と南極、それに氷床、地形、地質、大気など異なるアプローチで様々な時間・空間スケールの変動を多面的にとらえることが極めて重要となっています。

一方、南極・北極は、地球近傍の宇宙や深宇宙への窓となっている点でも重要です。磁力線に沿って高エネルギーの粒子が降り注ぐ極域は、太陽面での爆発による巨大なエネルギーの我々の生活への影響を調べる格好の場であるとともに、南極内陸の超低温・超低湿度の大気は、赤外線から電波に至る様々な電磁波での大気や宇宙の観測探求を可能にする場でもあります。

とりわけ、近年の科学技術の発達で、観測技術、分析技術、データ解析技術などが進歩したことにより、極域観測で得られるデータの重要性は右肩上がりに上がっているといえるでしょう。人類の未来を予測するデータの宝庫である極地の研究を行う国立極地研究所が、データ・サイエンスを強力に推進する情報・システム研究機構の一員であることはたいへん幸運なことです。平成28年に機構に新設されたデータ・サイエンス共同利用基盤施設に、平成29年には極域環境データサイエンスセンターが設置されました。同センターと協力して観測データ・資料データの利活用を進めるとともに、「南極から迫る地球変動システム」を重点テーマとする南極地域観測第Ⅸ期6か年計画(平成28年度~平成33年度)、「持続可能性に向けての北極域での挑戦(ArCS)」と題する北極域研究推進プロジェクト(平成27年度~平成32年度)などの観測研究事業を推進して、極地に関する観測研究を総合的に行う全国唯一の研究所としての役割を果たしたいと存じます。

皆様方のご理解とご支援をぜひよろしくお願いいたします。

平成29年10月
国立極地研究所長 中村卓司

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