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戦略目標③

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北極域における自然環境の変化が
人間社会に与える影響の評価
戦略目標3

統括役:杉山 慎(北海道大学)
統括役:杉山 慎(北海道大学)

北極域の環境変化が社会に与える影響

北極域における急激な環境変化は、凍土融解や氷河流出、河川の増水による自然災害のリスクを高めるだけでなく、北極域の人々の生活、特に先住民による伝統的な活動にも大きな影響を与えています。

一方で、海氷の融解によって地下資源へのアクセスが容易になる他、北極航路の航行が可能となるなど、人間活動に対して正の側面も顕在化しています。しかし気候変動そのものに関する研究と比較して、その社会影響に関する研究は緒についたばかりです。

このような背景のもと、「北極域での自然環境の変化が人間社会に与える影響の理解」は重要かつ緊急の課題となっており、自然災害、資源利用、生業や伝統文化へのインパクトなど、社会影響の事例は多岐にわたります。

日本がGRENE北極/ArCSを通じて培った研究成果と自然科学・社会科学の連携体制は、その複雑なメカニズムの解明と定量的な影響評価を可能にするものです。さらに、日本の得意分野である工学的な知見と技術を活かせば、緩和・対応策の提案につながる成果が期待できます。

7月に入ってようやく海氷が岸を離れ、600人が暮らすグリーンランド・カナック村に短い夏が訪れる
7月に入ってようやく海氷が岸を離れ、600人が暮らすグリーンランド・カナック村に短い夏が訪れる
写真/杉山 慎(北海道大学)

自然科学・社会科学・工学の研究連携

戦略目標③では、自然科学・社会科学の研究連携体制に、航路、船舶、廃棄物や住環境に関わる工学分野の研究者を新たに加え、この複雑かつ重要な課題に取り組みます。具体的には、

  • シベリアやアラスカにおける陸域環境と生態系の観測網を構築し、その変化がエネルギー資源と食に与える影響を評価します。
  • 北極航路に焦点をあて、船舶航行に役立つ海氷情報の作成手法の開発と提供、船舶の性能予測および安全性評価、油流出事故のインパクト評価と対策手法の検討を行います。
  • 北極域における重要な居住地であり交通拠点ともなる沿岸域に着目し、特に氷河・氷床の融解が激しいグリーンランド沿岸部を中心に、陸域・海洋・大気の変化が人間社会に与える影響を精査します。

自然科学、工学、人文社会科学の研究者が連携して、気候と自然環境の変化が社会に与える影響を多角的に理解し評価します。

北極域の持続可能な将来のために

戦略目標③の特色は、自然環境変化に対する深い理解を、社会影響へと発展させる重要かつ挑戦的な試みにあります。GRENE北極とArCSでの研究成果と連携基盤を踏まえた新しい方向性を築くとともに、工学分野の研究者の参画により「環境変化と社会影響の理解」から一歩進めて「緩和・対応策の提案」につなげます。たとえば北極航路の利活用に関して期待される成果は、日本を含む世界の経済活動と文化交流に貢献するものです。

また主たる研究活動の場であるシベリア、グリーンランド、アラスカ等の住民・行政・政府を重要なステークホルダーと位置付けて、得られた知見に基づいた影響緩和・対応策を現地住民と行政に提言し、北極域の持続可能な将来に資することを目指します。