北極海環境動態の解明と汎用データセットの構築
研究課題代表者:渡邉 英嗣(海洋研究開発機構)
概要
北極海の海盆域や氷縁域における海洋熱輸送・生態系・物質循環に関する知見は不十分であり、それらを研究することは激変する極域の持続的利用に向けて喫緊の課題です。本課題では、次の3つのサブ課題を軸に北極海環境動態の解明を進めます。
- サブ課題1.季節海氷域から多年氷域に至る海洋熱・淡水輸送および物質循環
- サブ課題2.急激な海氷縁後退に応答する海洋生態系の脆弱性評価
- サブ課題3.海氷を介した大気–海洋(波浪含む)相互作用
チームの各メンバーは複数のサブ課題に関わり、関連グループとも緊密に情報交換しながら研究を進めていくことで北極海環境動態の全体像を示し、解明していきます。
先進的な観測システムを整備することで、重要な海域ながらアクセスが難しかった氷縁域や多年氷域にアプローチしていく試みがGRENE北極/ArCSから大きく前進する点です。
研究成果の社会実装を推進する手段の1つとして、汎用的なデータセットをウェブサイトで公開し、様々な北極環境変動の実態把握に活用可能な人間社会に関わる貴重な情報源を提供します。
サブ課題1と2の研究成果は「中央北極海無規制公海漁業防止協定」に関わる魚類資源の保存と持続的利用、および生態系ベースの水産資源管理に貢献します。サブ課題3の氷縁域やアイスキャンプでの観測データに基づいた知見は、北極航路上における海況予測の精緻化や船舶の安全かつ効率的な航行支援につながるものです。