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極北カナダ・ケンブリッジベイでの国際海氷相互比較研究観測

2022年4月27日から6月4日まで、極北カナダのケンブリッジベイで行われる国際海氷相互比較研究観測に海洋課題の活動の一環として参加します。活動の様子を現地の写真と共にお伝えします。

カナダ極北研究ステーション(CHARS)。ここを拠点に観測活動を行う。

この観測は、海洋研究科学委員会SCOR: Scientific Committee on Oceanic Research で発足したワーキンググループWG152 ECV-Ice: Measuring Essential Climate Variables in Sea Ice の活動の一環で実施されます。本活動では、世界標準となる海氷の生物地球化学研究に関する観測手法、サンプル処理手法の確立を目指しています。観測にはカナダから4名、ベルギーから4名、ノルウェーから3名、日本から4名(研究者2名:野村 大樹(北海道大学)、漢那 直也(東京大学)、大学院生2名:戸澤 愛美(北海道大学)、能城 太一(北海道大学))が参加し、1ヵ月以上をかけて観測をし続けます。

また、観測実施期間中には、海氷の生物地球化学研究コミュニティーBEPSII によるアウトリーチ活動としてSea Ice School が開催されます。本スクールの実施により、北極域で活動する研究者の育成、研究コミュニティの形成などが期待されています。

ケンブリッジベイ周辺地図。Kugluktukの空港で。
BEPSII Sea Ice Schoolポスター。海外から30人の学生が集まる。
出典:BEPSII Sea Ice School

観測を終えて

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

全ての観測を終え、無事に全員日本に帰国しました。
1ヵ月ぶりの日本は、もう夏のような暑さになっていました。
つい先日までは雪景色の中にいたのに、不思議な気持ちです。

今回の観測では、これまでの記事で紹介したように、実際に海氷の上に行き様々な観測を行いました。
−20℃になるほど寒い環境、1時間を超えるスノーモービルでの移動、シロクマの危険・・・
様々な困難もありましたが、その甲斐あって貴重なデータやサンプルを得ることができました。
これからサンプル分析やデータ解析に追われることになりますが、自身の目で見た環境でどのようなことが起こっているのか、今から結果が楽しみです!

また、今回の観測では、カナダ・ノルウェー・ベルギーのチームとともに観測を行いました。
1ヵ月以上をともに過ごしたので、お別れの時は寂しさもありましたが、また北極の地で一緒に研究できるように研究を頑張ろう!というモチベーションにもなりました。各チームの研究についても、どのような結果が出るのか楽しみです。

最後になりますが、今回ケンブリッジベイでの観測を行うにあたり、多くの方々にご支援いただきました。この場を借りて、心より感謝申し上げます。

(2022/6/15)

番外編~BEPSII Sea Ice School~

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

今回はECV-Iceの観測についての話から少し離れて、5月14日から23日にかけて行われたBEPSII Sea Ice Schoolについて紹介します。

BEPSII Sea Ice Schoolのチラシ。若手研究者を対象に、幅広い内容のレクチャーが行われた。
出典:BEPSII Sea Ice School

BEPSIIは海氷の生物地球化学研究コミュニティーで、極域の生態系サービスにおける海氷の役割を明らかにし、それらに関する国際的な問題について発信することを目的として活動を行っています。今回はアウトリーチ活動の一環として、博士課程の学生などの若手研究者を対象としたSea Ice Schoolを開催しました。このスクールには、カナダやアメリカの大学の学生はもちろん、イギリスやドイツ、デンマークなど世界各国から30人の学生が集まりました。生物や化学はもちろん、衛星データや数値モデルを専攻している人など、専門分野もそれぞれ全く違っています。私も、日本で海洋化学を学んでいる学生として、このスクールに参加してきました。

このスクールでは、10日間かけて、海氷について幅広い内容を学びます。午前中は、海氷についての講義を受けました。レクチャーをしてくれるのは、世界を代表する海氷研究者の方々です。海氷の構造、海氷に含まれる生物やガス成分、海氷‐大気‐海洋の相互作用など、各分野のエキスパートがそれぞれの分野について講義を行ってくださいました。日本からも北海道大学の野村 大樹准教授、東京大学の漢那 直也助教が講師として参加し、それぞれ海氷‐大気のガス交換と大陸‐海氷‐海洋の相互作用についてお話ししてくださいました。

スクール講義の様子
野村准教授による講義の様子
漢那助教による講義の様子

参加している学生の多くが海氷について研究をしていますが、自分の研究テーマと異なる分野については、なかなか学ぶ機会がありません。今回のように、幅広い分野について学ぶことができる機会は本当に貴重で、どの講義もとてもおもしろく、海氷についての新しい知識を身につけることができました。

午後には、フィールドやラボで海氷観測の手法について学びます。私たちが滞在しているCHARSからは10分ほどで海氷の上に行くことができるので、実際の海氷の上で観測を行います。海氷コアの採取方法や海氷下の海水のサンプリング方法、海氷下の光の測定などの様々な観測項目を、実際に体験しながら学ぶことができました。ラボでは、実際に取ってきた海氷サンプルについて、その中に含まれる成分を分析する方法や結晶構造を解析する方法を学びました。どれも実際に海氷観測で行われている手法で、これから海氷観測を行っていく私たちにとって、非常に有意義な時間でした。
終盤には、学んだことをもとに、グループごとに自ら計画して、海氷観測を行いました。海氷観測をするのは初めてという人も多かったですが、1週間のレクチャーのおかげで、様々な成分のデータを得ることができました。

グループワークの様子。必要なデータや観測機材など全て自分たちで考えながら計画した。

このスクールはもちろん全て英語で行われたので、英語が得意ではない私にとっては、時に大変なこともありました。しかし、スクールでの活動を通してできた友人たちや講師の方々に助けてもらいながら、非常にたくさんのことを学ぶことができました。ここで出会った世界中の研究仲間達と、将来一緒に海氷研究を行うことができるよう、引き続き研究を頑張りたいと思います。

スクールの様子は、Twitterアカウント@BEPSII_seaice #BEPSIIschool22 からも見ることができるので、そちらも是非ご確認ください!

(2022/5/30)

研究編②〜二酸化炭素測定〜

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

続いて、日本チームとカナダチームが一緒に行っている二酸化炭素に関する研究について紹介します。

これまで、海氷は海洋と大気の二酸化炭素交換を妨げる蓋のような役割を果たしていると考えられてきました。しかし、近年、海氷表面で二酸化炭素の吸収や放出が生じているということが明らかになってきています。そこで、今回の観測では、海氷と大気の間の二酸化炭素交換を測定する手法の確立を目的として、「渦相関法」と呼ばれる手法で観測を行っています。

カナダチームのタワー(左)と日本チームのタワー(右)。異なる範囲の観測を行っているが、近くに置くことで比較をすることができる。

渦相関法は、大気の乱流によって移動する二酸化炭素の量を直接測定する手法です。写真のような大きなタワーを立てて観測します。大きいタワーはカナダチームのもの、小さいタワーは日本チームのもので、それぞれ異なる範囲について測定を行っています。タワーを設置して観測することで、長期間にわたってデータを取得することができます。

これまで渦相関法は、森林や農耕地を対象に利用されてきました。海氷と大気の間の二酸化炭素の交換は、これら陸域と比べて小さいため、正確な観測は非常に困難です。中でも障害となるのが、水蒸気です。水蒸気が混入することにより、ノイズが生じてしまい、海氷と大気の間の小さなガス交換を見ることができなくなってしまうのです。そこで、従来の渦相関法のシステムに、新たに設計した除湿管を組み込みました。そして、今回の観測では、その除湿管を組み込んだ場合に、最適な設定(サンプルの取込量、ポンプの種類など)を見つけることを目的として、カナダチームの観測結果との比較を行います。

また、他の手法による観測結果とも比較を行うため、日本チームではCO2チャンバーと呼ばれる機材でも観測を行っています。

CO2チャンバー。上の部分が動いて、緑の輪の上に蓋をし、その中のCO2変化を観測する。渦相関法より小さい分、持ち運びにも便利。

これは、ドーム型の蓋の中に空気を閉じ込め、その中の二酸化炭素濃度の変化を見ることにより、二酸化炭素の移動を測定する装置です。渦相関法と比べると範囲は非常に狭いですが、直接、大気と海氷の間の二酸化炭素の交換を見ることができ、小さな変化も見逃さずに測定することができます。この結果と比較することで、渦相関法による測定がどのくらい正しいのかを検証していきます。

さらに、カナダチームでは、氷の中の二酸化炭素を測定する装置を利用していたり、実際に海氷サンプルの採取を行って、海氷中に含まれる炭酸系成分の分析を行ったりしています。これらの結果とも比較することで、より正確な観測手法の確立を目指します。

島に設置されたタワーや海氷上に設置した三脚にいろいろな測器(風速計や二酸化炭素センサーなど)を設置し、二酸化炭素交換量を測定している。また、比較のためのCO2チャンバーや海氷中の二酸化炭素を測定する平衡器も設置されている。

地球温暖化が進行し海氷が減少している現在、海氷が炭素循環にどのような影響を与えているかを知ることは非常に重要です。その実態を明らかにするよりよい手法を確立すべく、国を超えて協力しながら、観測を進めています。

(2022/5/29)

研究編①〜環境DNA〜

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

今回は、日本チームが行っている環境DNAの研究についてご紹介します。
今回の観測には環境DNAの研究者は参加していませんが、日本からのサポートを受けながらサンプリングを行っています。

環境DNAとは、環境中に含まれる生物由来のDNAのことです。海水中には、そこにいるたくさんの生物の環境DNAが含まれており、これを調べることにより、この海域にどのような生物がいるかを知ることができます。従来の目視観測や捕獲といった手法に比べて簡単であり、また生物を傷つけることなく調査ができるので、近年注目が集まっています。

日本チームでは、魚の環境DNAについて調査を行い、ケンブリッジベイにどのような魚がいるのかを明らかにしようと考えています。これまで様々な海域で調査が行われてきましたが、海氷域における研究はまだ少なく、海氷下における魚の種組成を明らかにすることが期待されます。

環境DNAのサンプリングはとても簡単です。
海水を採取し、DNA保存のための薬品を入れてラボに持ち帰ります。

環境DNAサンプルの採水の様子。より正確な調査のため、綺麗な手袋をつけて採水を行う。

持ち帰ったサンプルを濾過して、フィルターを冷凍保存します。

濾過の様子。中央にある透明なケースに入ったフィルターに環境DNAを集め、日本に持ち帰って分析する。

現場での作業はたったこれだけです。
あとはサンプルを日本に持ち帰り、PCR分析をしてどのような種類の魚の環境DNAが含まれているのかを調べます。

2 m近くもある厚い氷の下にどのような魚がいるのか、今から結果が楽しみです!

(2022/5/29)

生活&研究編~北極観測の大変なところ~

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

北極圏の観測は、他地域での観測とはまた違った大変さがあります。
今回は、ケンブリッジベイでの観測で出会った大変なことをご紹介します。

まずはなんといっても寒さです。
こちらは春とはいっても、まだ−20℃ほどの気温です。
最大限の防寒をして観測に臨みますが、細かい作業やゴム手袋が必要な作業では、薄い手袋に変えることもあり、かじかんだ手で作業をするのはとても難しいです。
しかし、一度作業に集中すると、みんな寒さも忘れて観測に熱中しています。

海氷コアを採取し、必要な部分だけ切って持ち帰る。
先に帰るカナダ研究者から能城さんへの観測操作の引き継ぎ。

また、ある日、観測場所へ行くと・・・
研究に使っている箱が壊されている!

二酸化炭素分析機器を入れていた箱が割れて壊されていた。そして中の毛布なども出てしまっていた。

犯人は・・・

シロクマ!

北極圏の研究においてシロクマは天敵です。
研究機材はもちろん、研究者自身がシロクマに出会ってしまう危険性もあります。
そのため、私たちが観測に出る時には、現地のイヌイットの方々にガイドをしてもらっています。彼らは普段からシロクマやオオカミを獲っており、肉を食べたり毛皮を使って手袋を作ったりして生活しています。そんな方々がガイドをしてくれるので、とても心強く、私たちは安心して観測を行うことができます。

ベテランガイド(左)と能城さん(右)。

(2022/5/28)

生活編③~食事~

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

極寒の中で1日作業をした後の楽しみは、なんといっても食事です。
現在はコロナウイルス感染拡大の影響を受けて、カフェテリアが営業を停止しているため、食事の準備は全て自分たちでしなければなりません。
観測後の食事の準備は少し大変ですが、みんな交代で食事を担当しています。

日本チームが担当したこの日のメニューは、手巻き寿司&ちらし寿司!
お米や海苔は日本から持っていっていたので、それ以外の材料を買いに現地のスーパーへ。
でも、北極圏のスーパーって何が買えるのだろうと不安に思っていましたが・・・

現地のスーパーの写真。

日本とそう変わらない普通のスーパーで、品揃えもバッチリでした!
買い物を終えて、料理を作り、いよいよ完成です!

プロジェクト名と参加大学の国旗をモチーフにしたちらし寿司。野村准教授の手先の器用さが光っている。

ケーキのようなちらし寿司や手巻き寿司作りなど、私たちにとっては見慣れた光景ですが、海外の研究者にとっては驚きの光景だったようで、とても喜んでくれて、みんなで楽しく食事を取ることができました。

他のチームが担当してくれた日には、タコスやハンバーガーなど、自分では作ったことのない美味しい料理とたくさん出会うことができます。観測中の料理は大変ですが、色々な国の食事を楽しむことができるし、みんなで準備をしたり食事を取ったりすることでコミュニケーションが取れて、とても楽しい時間です。

ノルウェーチームによるノルウェーの国旗を模したケーキ。ノルウェーの日とのこと。国歌を聴きながら食べた。
氷上では、お昼にカップ麺とおにぎりを食べている(米は15kg持ち込んだ)。カップ麺は日本のメーカーのものが手に入る(しかし異常に高い)。

(2022/5/28)

生活編②~CHARS~

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

今回は私たちが滞在しているCHARSについて紹介します!

ケンブリッジベイには、カナダ極北研究ステーション:通称CHARSと呼ばれる観測拠点があり、世界中から様々な分野の研究者が集まってきて研究を行っています。私たちもそこで1ヵ月間の研究活動を行います。案内してもらって中に入ってみると、巨大な倉庫や綺麗なラボなど充実した設備が整っており、研究に最適な環境です。

CHARSの建物。中にはラボや会議室に加えて、大人数での集会を開くことができるようなホールも存在している。

また、CHARSには研究者が宿泊するための設備も整っています。コテージのような建物には、広いリビングと綺麗なキッチン、2段ベッドのある個室がいくつか用意されています。完成から数年の建物なので、まだまだとても綺麗で非常に快適です。今回は、様々な国から集まった研究者たちとともに、ここで共同生活を送っています。

倉庫の様子。天井近くまで棚が続いており、手前の赤い機械を用いて荷物の出し入れを行う。
CHARS内の居住区。この中に各自の居室やリビング、キッチンなどが全て備わっている。
居室の様子。

(2022/5/28)

ケンブリッジベイでの観測の様子を紹介します。

執筆者:漢那 直也(東京大学)

観測の前日に皆で話し合いをして、参加人数、必要なスノーモービルの台数、観測場所、何をやるか、観測にかかる時間などを事前に決めます。海氷上で観測を行うためにはCHARS(カナダ極北研究ステーション)の支援が必要不可欠です。話し合って決めた内容をCHARSのフィールドオフィサーに伝え、観測の許可をもらいます。

ホワイトボードに書かれたスケジュール表。活動予定、夕食当番が1週間分組まれている。夕食当番の欄は比較的すぐに埋まるが、掃除当番の欄はいつも空欄になっている。

朝8時頃から準備を始め、9時に観測点へ出発します。多いときには、12名で観測点へ向かいます。観測点までは約1時間のドライブです。

スノーモービルに燃料を入れるためガソリンスタンドで待機。スノーモービル6台に12名が乗車。橇はいつも荷物でいっぱい。

4月の下旬は、外気温が-15℃と寒く、スノーモービルでの移動が辛かったのですが、徐々に暖かく(?)なっています。

2022年のケンブリッジベイ空港の気温データ。© WeatherSpark.com 灰色の線は毎日の気温。赤線と青線はそれぞれ日平均の最高、最低気温。

観測点についたらまず海氷に穴を開けます。海氷に空けた穴を使って、透過光の測定や、海水中の水温、塩分の測定、採水などを行います。

海氷に穴を開ける様子。氷の削り屑が穴の中に溜まっていくため重くなり、削り屑を掻き出すのが大変。かなりの重労働。氷の厚さは約2 m。
海氷を透過する光の量を測定する様子。氷の下の植物プランクトンは光合成に光を必要とするため、光量の測定は重要なパラメータ。長いパイプを使って、センサーを穴の中に入れる。
ペリスタルティックポンプを使って、海氷下10 mから海水を採水する様子。黒いチューブの先端が氷に開けた穴の中に入っている。採取した海水から環境DNAを抽出し、海洋生物の多様性評価を試みる。

またコアラーを使って、海氷コアを採取します。採取した海氷コアの温度は現場で測定します。温度以外のパラメータ(塩分や栄養塩、ガス、植物プランクトン色素量など)は、細かくカットした海氷コアを実験室に持ち帰って測定します。

海氷コアを採取する様子。氷が厚いため、エクステンションが必要。コアラーの長さ1m+エクステンションの長さ1mで2mの海氷コアが採取できる。
採取した2.01mの海氷コア。1段目左がトップ。2段目右がボトム。
海氷コアのボトム。skeletal layerとも呼ばれる。最も柔らかく脆い部分。植物プランクトンが密集しているため、氷のどの層よりも茶色く見える。
海氷コアの温度を測定している様子。ドリルでコアに穴を開けたら、温度センサーを穴の中に差し込む。温度の測定が終わったら、ノコギリでコアをカットして持ち帰る。カットしたコアを融かし、塩分などを実験室で測定する。
CHARSのラボで作業をする様子。持ち帰ったサンプルのろ過や塩分の測定などを行う。

全ての観測が終わって住まいに戻るのは18時頃です。サンプルの処理がある人は、ラボで作業を続けます。夕食が22時になることも。連日お疲れ様です。

(2022/5/18)

観測メンバー

執筆者:野村 大樹(北海道大学)

観測メンバーはノルウェー、カナダ、ベルギーなど様々な国から参加しており、いろいろな国の研究者と共同生活をしながら観測を進めています。また、ガイドを雇って観測を実施しています。シロクマの監視やルートなど案内などしてもらうためです。現地のイヌイットの人ということで、日本人に見た目が似ておりなぜか安心します。

カナダ人のCO2の専門家。海氷内に平衡器を設置し、海氷内の二酸化炭素濃度をモニターするのが今回の仕事。なんでも食べる。
今回の観測のリーダー。カナダ人のブレントさん。CO2の専門家。買い出し、相談、スノーモービルのアレンジ、学生の世話など朝から晩まで大忙し。ただ夜はアイスホッケーの試合をしっかり見る。
左は地元のイヌイットのデイビット。とても優しく頼もしい。何を言ってもOKと言ってくれる。右は野村。
海氷や海水の微量金属が専門の漢那さん。沖縄出身のため寒さに弱い。靴下を4重にしても寒いとのこと。Sea Ice Schoolで講師を務め、若手育成にも貢献。
デイビット(左)が作ったお手製の手袋。戸澤さん(右)が試着。オオカミの毛皮で作っているとのこと。デカすぎてぽんぽんを持っている感じ。全く寒くない。

北海道大学3人組とCO2チャンバーの写真。野村は海氷のCO2が専門、真ん中の能城さんは大気との気体交換過程が専門。右の戸澤さんは海氷下の炭酸系が専門。それぞれの目的に合わせてサンプリングを進めている。さらに写真の右は、大気と海氷間の二酸化炭素交換量を把握するためのチャンバー。低温で最初調子がわるかったのだが最近調子がよくなってきた。

愉快なベルギーの研究者(海氷内のガスの専門家)と日本の学生(能城さん)の交流。言葉や文化は違うが欲しいものは一緒である。
食事も国ごとに当番制。今日はノルウェーチーム(トロムソ大学)のバーガー。ノルウェーチームといってもフィンランド人のヤニーナ(海氷植物が専門)とカナダ人のカーリー(海氷植物が専門。以前サロマ湖での観測にも参加した)が手際よく準備し、とにかく挟んでかぶりつく。

(2022/5/15)

生活編①~日本からケンブリッジベイへの大移動~

執筆者:戸澤 愛美(北海道大学)

ここからは、ケンブリッジベイでの研究活動や生活について詳しく紹介していきます。

ケンブリッジベイはカナダ・ヌナブト準州のビクトリア島と呼ばれる島にある小さな集落です。北緯69度の北極圏にあり、もちろん日本から直通の飛行機はありません。そのため、私たちは成田→バンクーバー→カルガリー→イエローナイフ→ケンブリッジベイと、4本もの飛行機を乗り継いでケンブリッジベイまで到着しました。日本を出発してから到着までに、なんと3日!

日本からの移動経路。カナダ国内を移動するだけでとても時間がかかる。

1ヵ月にもわたる観測のため、4人でこれだけの大荷物。
イエローナイフ空港。シロクマとオーロラがお出迎え。

段々と雪が増え、北極に向かっているのを感じる飛行機の中で、期待と少しの不安を感じながらケンブリッジベイへと向かいました。

イエローナイフの街の様子。オーロラを見るためにたくさんの日本人が訪れるそう。
ケンブリッジベイ空港まで向かう途中、給油のために降り立ったKugluktukの様子。

(2022/5/8)

現地の様子と観測開始

執筆者:野村 大樹(北海道大学)、漢那 直也(東京大学)

観測の様子

スノーモービル出発(観測点まで1時間ちょっと。ただただ寒い)

日本から送った荷物あるかな?あったっぽい!
CHARSのラボでの作業。採取したサンプルの処理などをするところ。
観測サイトでグリズリー(ヒグマのようなクマ)がいないか監視。先住民の方がガイドとして同行してくれているので安心だが、みんなで随時監視。

漢那さんによる海氷(2 mほど)下の鉄分析のための海水の採取。
能城さんによる渦相関大気−海氷間のCO2フラックス装置設置の様子。

住まいなどの様子

1ヵ月以上過ごす住まい。
食事風景。みんなのために日本食を作ったり、ヨーロッパの食事を作ってもらったりなど色々。
観測点でのおにぎり。最高。寒いので硬い。
スーパーマーケットも2つあり色々なものが手に入る。値段が高いのは覚悟していたが飲み物(酒類はない)が異常に高い。

(2022/5/3)

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