ArCS IIイベントシリーズ・サイエンストーク「とける永久凍土 現地では何が起きているのか?」を開催しました
ArCS IIの最終年度である2024年度は、代表機関の国立極地研究所の南極・北極科学館を中心に、ArCS IIイベントシリーズ「ようこそ、北極へ!」を、年間を通して行っています。2024年12月7日(土)には、飯島 慈裕氏(東京都立大学)を講師に迎え、サイエンストーク「とける永久凍土 現地では何が起きているのか?」を実施しました。
登壇者の飯島氏は、自然地理学(特に気候学)が専門で、永久凍土について20年以上研究を続けています。サイエンストークは、人工的に作った凍土を全員に触ってもらうところから始まりました。参加者は、「冷たい!」「硬い!」などの声を上げつつ、興味深そうに凍土と普通の砂とを触り比べていました。その後、永久凍土の成り立ちや特徴を、多くの貴重な写真や映像とともに紹介しました。


次に、地球温暖化による永久凍土への影響を、現地調査の様子を交えながら紹介しました。東シベリアでは、気温の上昇と積雪の増加により、地下の温暖化と湿潤化が同時に起こっています。その結果、カラマツ林の枯死や土壌からの温室効果ガスの放出、サーモカルストと呼ばれる地表面が沈降する現象の出現で空港や家屋、農地が使用できなくなるなど、さまざまな影響が出ています。研究者は現地に暮らす人々への情報提供や意見交換を通して、変わりゆく永久凍土に適応する方法をともに探っていることも紹介しました。
質問の時間には、「永久凍土層は地下何mまで続いているのですか。」「永久凍土がとけると、地中から温室効果ガスやマンモス以外でどのようなものが出てくるのでしょうか。」「人々の生活が保障できなくなる、住めなくなるということは今後あるのでしょうか。」などの質問が出て、サイエンストーク終了後にも熱心に質問する参加者もいました。




参加者アンケートには、「降水量が少ない土地でも森林が広がっているのは、永久凍土のお陰なのだと納得しました。」「温暖化が進むと単純に気温が高くなって雨や雪の量が減るものだと思っていましたが、永久凍土の地域ではその反対のことが起こっていて、すごく興味深かったです!」「今後、現地に住む人々に対して、どのような影響や配慮が必要になりそうかを考えるきっかけになりました。」「永久凍土に関する知識だけでなく、映像を通して調査風景や現地の人々の生活、温暖化によるサーモカルスト現象などを学ぶことができ、とても楽しかったです。」「北極の研究が学際的な非常に興味深い学問だと知れました。今、学校で受けている授業でもその1つ1つが環境問題などに役立つかもしれないのだと思って励みたいです。」「地図や実際の道具などが用意されていて、北極研究を実感しやすかったです。」「紹介して下さっていた本をいくつか買って読んでみたく思います。」などの感想が寄せられ、参加者の永久凍土や北極域研究への興味・関心をさらに引き出すことができました。