「5月って、こんなに天気が悪かったかなぁ」、過去にも越冬を経験した隊員からはこんな言葉が聞かれました。この頃は、極夜に向け、ただでさえ明るい時間が日ごとに短くなっていくのを実感します。その上、外出制限の発令日数が10日に達するなど、実際に天気が悪い日も多かったのが今年の特徴でした。
それを象徴するものとして、昭和基地の定常気象部門で観測している日照時間があります。地上に届く太陽の直射光が、ある閾(しきい)値(120W/m2)を超えた場合にカウントされ、夜間はもちろん、くもりや雪で太陽が出ていない時には、ゼロとなります。
5月に入ってから、ずっと天気が悪く日照時間「ゼロ」を記録していた昭和基地では、月末になってこの記録がどこまで続くのか話題となりました。昭和基地での観測史上5月の日照時間が「ゼロ」だったことはありません。隊員の注目は5月31日の太陽の光に集まりました。
当日、天気は晴れて、氷山の向こう側から最後の力を振り絞るかのようにオレンジ色の太陽が昇ってきました。そして氷山の頭すれすれの高度でほぼ水平に動き、向こう側へ沈んでいきました。果たして、今日の太陽の光は閾値をこえることができたでしょうか? 観測結果は、わずか8W/m2しかなく日照時間を満足するにはとうてい足らないものでした。「太陽が出ていたのに日照時間が『ゼロ』なんて」、と納得いかない隊員が気象担当の隊員に説明を求める場面も見られました。
このようにして昭和基地の観測史上初、5月の日照時間「ゼロ」が記録されました。これから約40日間の極夜を経て、再び昇ってくる太陽の眩しさを隊員達はどのような思いで見るのでしょうか。
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