11月8日から10日にかけてVLBI観測が行われました。VLBIは、Very Long Baseline Interferometryの略で、超長基線電波干渉法と訳されています。受信するのは、地球から数十億光年も離れている電波星(クエーサー)からの電波です。同じクエーサーからの電波を、離れた場所にある複数のアンテナで同時に受信すると、その到達時刻にはわずかながら差が出ます。この時刻差から観測局間の距離を求めることができ、観測を繰り返すことにより距離変化を求めることができます。
光の速さで進む電波の到達時刻の差を求めるには、各観測局に精密に時を刻む時計が必要になります。そのために高精度な水素メーザー原子時計が使われています。測地学系のVLBI観測では、プレート運動や氷床の変動に伴う地殻変動の検出などを目的としています。複数の地点で同時に観測を行えば、数千km離れた地点間の距離を数mmの精度で求めることができます。広範囲で同時観測を行なうためには、国際協力が欠かせません。今回は日本の昭和基地のほかに、南極半島にあるオヒギンス基地とブラジル、アメリカ、チリ、オーストラリア、南アフリカからの計7局が参加しました。これにより、南極プレートの移動方向・移動速度を検出できます。
様々な方向からの電波を受信するため多くのクエーサーを捉えます。今回は60個のクエーサーからの電波を受信しました。クエーサーは強い電波を出していますが、地上に届く頃にはその電波は弱くなっています。微弱な電波を受信するために、昭和基地では直径11mのパラボラアンテナを使っています。南極ではブリザードなど厳しい気象条件のため、国内とは違いレドームで覆われています。
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