我々電離層定常観測では幾つかある観測項目の中の1つに「電離層垂直観測」というものがあります。電離層垂直観測装置はイオノゾンデと呼ばれ、観測から得られる1次データをイオノグラムと呼んでいます。イオノゾンデは電離層に電波を垂直にうち当てて反射して来た信号を調べる一種のレーダですが、よく見るレーダのようにアンテナを振る代わりに観測周波数を変動させます。広い周波数にわたって信号を解析すると電離層の性質が良くわかります。イオノグラムは横軸が周波数(1〜30MHz)、縦軸が見かけの電離層高度(0〜1000km)を表していています。 イオノゾンデの観測電波は、30mの鉄柱に取り付けられたデルタループ型アンテナ(子供の頃に描いた木のような形、すなわち三角形に縦棒を通したもの)で送受信されます。2月初頭、風の無い日を選びフィールドアシスタント隊員とこのアンテナに登りアンテナの補修および点検を行ないました。また、この時を利用して昭和基地のパノラマ写真の撮影にも成功しました。
5月7日深夜に、はじめて渦巻状のオーロラが見えました。その時のイオノグラムデータをグラフに示します。右にある1時間前の静穏な時の電離層に比べて複雑に変形しているのがわかります。
イオノゾンデによる電離層観測は南極昭和基地の他、日本では稚内、国分寺(東京)、山川(鹿児島)、沖縄の4カ所で情報通信研究機構(NICT)が定常的に行っています。観測データから電離層の主要なパラメ−タを読み取り、デ−タベ−ス化して公開されています(http://wdc.nict.go.jp)。昭和基地での観測は3次隊の1959年2月から継続しています。
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