温かいお湯をコップに注ぐとどうなるでしょうか? モコモコと白い湯気が出てきますね。でも、南極では少し違います。外気温が日本よりずっと低く、湯気がたくさん出てきやすい環境にあるにもかかわらず、それほど白い湯気を見ることができません。湯気は、大気中に浮いている小さな塵−大気エアロゾル粒子の周りに水蒸気が凝結してできた、たくさんの小さな水滴からできています。このエアロゾル粒子が南極では非常に少ないため、発生する湯気の量も少なくなっているのです。ちなみに、車や工場などから出される排煙によって汚れている日本の都市大気には、空気1cm3 の中に数万個以上のエアロゾル粒子が浮遊していますが、昭和基地周辺ではその1/100から1/1000程度の濃度しかありません。湯気と同じ原理の、寒いときに吐く息が白くなる現象も、ここでは起こりづらくなります。 昭和基地では、清浄大気観測室を設けて、人間活動の影響を受けていない自然本来の大気中に含まれている大気エアロゾル粒子の詳細な観測を行っています。観測室では、様々な観測機器を用いて、エアロゾル粒子の濃度や化学的な特徴、光の散乱特性などを調べています。この綺麗な南極の大気、いつまでも守っていきたいですね。
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