53次隊が昭和基地入りして1カ月が過ぎようとした1月21日、昭和基地を目指していたしらせよりショックな一報が入りました。「接岸断念」。南極観測の歴史の中では数回起きたことではありますが、35次隊以来の事件です。2代目しらせから取り入れられたコンテナ、大型大気レーダーや自然エネルギー棟などその建設に必要な大型物資などは接岸後に雪上車による氷上輸送で昭和に運び入れられる予定でした。接岸できないということは、これら大型物資の輸送が、想像がつかない程、困難になることを意味します。
我々南極地域観測隊の第1番目の目標は越冬成立。つまり53次隊が越冬生活を送るための物資は必ず運び入れなければなりません。しらせまでは直線距離で21キロ。これまでに上空から偵察してきた接岸不能時の氷上輸送ルートを実際にスノーモービルで走り、安全なルートを作りましたが、その距離30キロ。1日1往復が限度となる距離です。ヘリコプターでは運べない大型物資やコンテナ、危険物などを雪上車8台をフル稼働して運びます。同時にヘリコプターによる空輸も行います。海氷上の雪面が安定する深夜に氷上輸送、日中は空輸。52次隊、53次隊、両隊が全面協力して24時間体制での作業が続きました。2月10日の早朝に氷上輸送が終了し同日夕方に空輸が終わりました。しらせに積まれている全量は運べませんでしたが、越冬に必要な最低限の物資は何とか運び入れることが出来ました。
越冬生活の最後にして最大とも思えるプロジェクト。多少の天候不良では止める訳に行かず、徹夜作業が続き、疲れもピークに達し、また、本当に終わるのか?と不安になることもありましたが、全員の団結力によりやり遂げることが出来ました。
大プロジェクトをやり遂げた10日の夕方、気持ちの良い夕陽を浴びながら、いつもの場所でいつもどおりに撮った集合写真には、やりきった感でいっぱいのみんなの笑顔が輝いていました。
52次の昭和基地NOWはこれで最終回となります。更新が遅れご迷惑をおかけしましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。
|