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VLBI観測

2013年2月13日〜14日


多目的パラボラアンテナ
観測で使用した多目的バラボラアンテナです。

 昭和基地では年に数回、VLBI観測という測地観測を行います。VLBIとは、Very Long Baseline Interferometryの略語で、日本語では「超長基線(電波)干渉法」といいます。聞きなれない言葉かもしれませんが、「ハワイ島が日本に年間何cm近づいている。」などという話は聞いたことがあるかもしれません。

 VLBIでは、はるか数十億光年彼方の電波星(クエーサー)から発せられた電波を地球上の何点かで受信して、数千km離れた観測点間の距離をわずか数mmの誤差で測ることができます。観測は、大きなパラボラアンテナと原子時計(とても正確な時計で、100万年に1秒程度しか狂わない時計)などを備えたいくつかの観測点で同時に行われます。星から発せられた同じ電波を各観測点が受信する時刻は、星の向きや観測する位置によってわずかに異なります。 このわずかな時刻の差を原子時計で計測し、そこから各観測アンテナ間の距離を正確に求めることができるのです。また、これを応用して地球の姿勢の変化も正確に測ることができます。地球の自転は一定のように感じますが、自転の速度や軸の傾きは、太陽や月の引力、地球内部のコアとマントルの関係や大規模な地殻変動などにより変動していることがわかってきています。最近では、海流の変化、成層圏での偏西風変動、後氷期隆起現象など地球環境の変化により地球の姿勢が変動していることも明らかになってきました。

 ここ昭和基地には直径11mの多目的パラボラアンテナと原子時計(水素メーザー)が備えられています。そして、毎年、国際VLBI事業(IVS:International VLBI Service for Geodesy and Astrometry)に参加して、南極大陸の数少ない観測点として国際観測事業の一翼を担っています。毎年観測を行うことにより、南極大陸のプレート運動や地球姿勢の変動が明らかになってきています。

 2月に3度の国際VLBI観測が行われました。参加した観測点は、昭和基地のほか、南極半島のオヒギンズ基地、チリ、南アフリカ、ブラジル、ハワイなどでした。これらの観測点のパラボラアンテナが、予め定められたスケジュールで一斉に同じ星に向いて電波を受信するのです。昭和基地では、地圏担当隊員と多目的アンテナ担当隊員の二人が数日前から機器の立ち上げ、点検や調整を行い観測に臨みました。一度の観測は24時間あるいは48時間の連続観測で、その間にアンテナの向きを次々に変えて、全部で100〜300個程度の星からの電波を受信します。一度観測が始まると数十秒から数十分でターゲットの星を切り替えていくので、食事やトイレのタイミングを計るのが大変です。しかし、他の隊員の協力で、留守番係や食事の出前などをしてもらい、2月の観測は全て無事に終了しました。

 次回の観測は11月に予定されています。その間、過酷な環境下の観測施設を維持管理するのも越冬隊員の大切な仕事です。はるか彼方の電波星、地球、そして南極と壮大なスケールで繰り広げられるVLBI観測も、わずかな人数の越冬隊員の地道な努力によって支えられています。


観測事前準備
観測を開始する前の準備風景です。

 
2月13日の気象情報
天気 曇後時々晴
日の出 03:49
日の入 21:19
最高気温 -0.1℃
最低気温 -6.5℃
最大風速 18.4m/s
 
 
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