大気中のオゾン濃度を直接観測するオゾンゾンデ観測を以前の記事でご紹介しました。このオゾン全量観測も観測の対象は大気中のオゾンですが、濃度ではなく、地表から大気の上端までの気柱に含まれるオゾンの総量(これを「オゾン全量」といいます。)を観測しています。観測にはドブソンオゾン分光光度計という観測測器を使用し、地上に到達する紫外線のうち、オゾンに吸収されやすい紫外線とオゾンに吸収されにくい紫外線の強度比を測定することによりオゾン全量を測定します。通常は太陽光を用いて観測していますが、太陽が出ない極夜時期は満月頃の月光を用いて観測します。
南極では、冬季から春季にあたる8月から9月ごろになるとオゾンホールと呼ばれる現象が出現し、急速に発達します。オゾンホールとは南極の上空のオゾン全量が極端に少なくなり、オゾン層に穴があいたようになる現象です。この現象の発見には昭和基地でのオゾン全量観測が大きく寄与しました。今年もオゾンホールの時期になり、昭和基地でも日々のオゾン全量を今まで以上に注意深く監視しています。この日の天気は薄曇でしたが、雲から太陽光が透けていたため、通常通り観測ができました。
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