昭和基地の外での作業
2019年9月26日
雪に埋もれた圧雪車
PB301掘り出し前
9月23日から26日までの日程で昭和基地の外、南極大陸上にあるS16と名付けられた場所での作業がありました。
目的はS16に置かれた圧雪車の掘り出しと昭和基地への輸送です。この圧雪車は昭和基地から約1,000キロ離れたドーム基地まで2往復していて、約250キロ離れたみずほ基地へも行ったり、昭和基地や南極大陸各拠点の整備にも使われるなど、極寒で空気が薄い非常に厳しい南極内陸の環境のなかで大活躍し、今年の1月にドーム基地への調査から戻ってきていました。今回私達第60次越冬隊帰還と一緒に日本に持ち帰り整備するため昭和基地まで運ぶのです。
目的地のS16に着くと早速掘り出し作業です。まずは雪で埋もれたエンジンを慎重に掘り出して氷をお湯でとかしてエンジン始動。…でもここが第一関門で、エンジンがかからないと輸送が非常に困難になります。半年以上極寒の地で氷漬けになったエンジンに皆「うごけ!うごけ!」と叫びながらの始動で、苦労はありましたがエンジンがかかってくれました。
その後車両の前部の掘り出しをして1日目は作業終了。昭和基地からこのS16という場所に行くには雪上車で半日以上かかるので、この日はここまでで時間いっぱいでした。
2日目は朝から掘り出し作業です。雪は硬くスコップが入らず汗だくになりながら少しずつ削り、また車両の配管は一旦融けて凍りついた氷が手掘り部隊の前に立ちはだかりさらに掘り出しを困難にさせます。そう、この掘り出しが第二関門、氷は力を入れないと砕けませんが、力を入れすぎると車両の配管に傷をつけてしまいます。埋もれた車両の周囲の雪は重機で取り除きますが、車両付近は手作業です。皆ヘトヘトになりながらもその日のお昼頃に圧雪車全体があらわになりました。午後には第三関門である圧雪車の「移動」です。少しずつ重機で引っ張っては止めて確認、引っ張っては確認を繰り返し安全を確認しながら移動し、停めてあった場所から動かせるようになったときにはメンバーで喜び合いました。でもまだまだまだ困難は続きます。
3日目からは昭和基地への輸送になります。今回圧雪車はそりに載せて運ぶのですが、13トンも重量があるので、そりに乗せてもひっぱる車両が1台ではびくともせず2台の雪上車が引っ張ってやっと動きました。ここで第四関門クリア…ですが、ひっぱる2台の雪上車の運転手は息を合わせて安全を確認しながらゆっくりと移動しなくてはなりません、とても集中力のいる作業です。そして輸送にはまた掘り出し以上の多くの困難が待っていました。下り坂では、引いているソリが滑り落ちてしまわないよう引く体制を変えないといけない時もあります。氷がむき出しになっている場所も危険ですし、雪が深ければ引く車両が滑って引けなくなってしまいます。そして海氷にでれば海の割れ目におちたりバランスをくずしたりしないようにしたりと、状況によって引っ張る構成を変え安全を確認しながら、移動といくつもの関門をクリアしていきました。
こうして3日目・4日目の2日かけて昭和基地まで無事に運ぶことができました。
これで夏に一緒に日本に帰ることができます。
天気 | 日の出 | 日の入 | 最高気温 | 最低気温 | 最大風速 |
雪一時曇 | 5:52 | 18:37 | -19.4℃ | -28.9℃ | 7.8m/s |