極域科学資源センターは平成18年10月の組織再編時に極域情報系に新たに設置された。南極隕石ラボラトリー、氷床コアラボラトリー、岩石資料室、生物資料室から構成される。本センターの源は昭和48年の国立極地研究所の創設時の資料系に溯る。その後、資料系は時代の要請を取り入れながら改組・発展を繰り返し、生物系資料部門、非生物系資料部門、及び、低温資料部門の活動が継続されてきた。隕石資料部門は平成10年(1998年)に南極隕石研究センターに発展的に改組され、法人化に伴い業務に特化した南極隕石センターを経て、当センター内の南極隕石ラボラトリーとなった。
 極域科学資源センターはこれまでの資料系やセンターが対応してきた資料の収集・整理などの業務を発展させ、将来的には南極観測のみならず北極観測からの資料などへの対応も視野に入れながら、極域観測から得られる試料、資料、データ類を貴重な資源として管理するとともに、国内外の研究者の共同利用や教育に供して行く。さらに展示等を通じて一般にも公開して行く。
 南極隕石ラボラトリー
 南極隕石センターは平成10年(1998年)に発足した南極隕石研究センターを基に業務センターとして平成16年度に発足した。
 当センターは業務として南極観測隊が発見採集した総数16200個の南極隕石を管理している。この数は南極で発見された隕石の60%、全世界の50%以上を占めており、世界最大の隕石コレクションである。
 南極隕石の分類結果によれば、このコレクションはきわめて稀な隕石種を含む多種多様な隕石で構成されることが
明らかになってきている。月隕石はやまと山脈裸氷帯で初めて発見された。Yamato 981031とYamato 983885の2個を加え、現有する同定された月隕石の個数は9個となり、月の科学の進展に大きな貢献をしている。また、第41次隊が持ち帰った中に南極で初めてナクライトという種類の火星隕石が3個見いだされた。このうちの1つ(Yamato 000593)は、13.7kgあり、世界最大のナクライトである。また、南極産エコンドライトとしても最大であり、多様な研究を可能にしている。現在コンソーシアム研究が進行中であり、火星の進化に関しての重要な新知見が得られることが期待できる。特に隕石中に見られる火星由来の粘土鉱物は火星表層の水の起源を研究する上で鍵となるだろう。また、やまと隕石の中から新たに火星隕石(シャーゴッタイト)に分類された全重量82.46gのYamato 980459は、コンソーシアム研究が平成15年春より組織され、多様な手法による分析が行われている。これらの発見により現有する火星隕石は6個となった。さらに新たな隕石の発見により、惑星の形成と進化の研究に大きな貢献をしていくことが期待されす。
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 氷床コアラボラトリー

 氷床コアラボラトリーは南極や北極等の氷床・氷河で掘削された氷床コア・雪氷コアの管理を行うとともに、基本分析を行っている。低温室内では氷床コア・雪氷コアの光学層位観測、電気層位観測等の非破壊分析を実施するとともに、コア試料の切り出し、表面汚染除去作業等の前処理作業を実施している。大気・雪氷分析室では前処理作業を行ったコア試料を融解した後、質量分析器、液体シンチレーションカウンター、イオンクロマトグラフ、レーザー微粒子計測装置、ICP質量分析器等を用いて種々の分析を実施している。最近では南極ドームふじで掘削した3,035mの氷床コアや、南極の多点において掘削した深さ100m程度の浅層コアの分析を重点的に行っているが、この他、北極域のグリーンランド、スバールバル、カナダ、アラスカなどの氷河で掘削されたコアの分析も行っている。また、コアの分析と関連し、大気・雪氷分析室、クリーンルーム等の設備の維持・管理、及び分析機器の維持・管理を行っている。また、月報を発行し、設備や機器の運用状況、試料の分析状況等の情報を利用者に提供している。

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 生物試資料・岩石試資料
生物試資料のHPへ
 生物系では、我が国や外国の南極観測隊、北極域での調査により得た生物標本を収集し、整理・管理して広く研究や博物館等での展示に貸し出しを行っている。蘚苔類を主とした植物標本は世界公共植物標本庫(World Public Herbaria)の一つとして昭和54年、国際植物分類学会によりコード“NIPR”で示される植物標本庫として登録され、研究者から利用されてきた。この標本庫は極地植物標本センターの役割を担っており、南極域では昭和基地周辺を中心とした東南極やキングジョージ島周辺の西南極、北極域ではスバールバル、アラスカ、エルズミア島等から採集された種子植物、蘚苔類、地衣類、藻類などの乾燥標本、液浸標本等が収蔵され、その数は約35,000点に達している。 また、−20度の低温室には約2,000点の冷凍植物標本が保管されており、生材料を用いた生理学的、遺伝学的研究などに供している。
 一方、極域の動物資料は、南極観測により得たアザラシ、ペンギンなどの海鳥をはじめビームトロールやSCUBAを用いた潜水調査で採集したウニやヒトデなどの底生動物、南極海での試験操業で得られた魚類等海の生物を中心に
1,000点余が登録され、研究・教育に供されている。また、船上観測等により採集されたプランクトンサンプルも収蔵され、研究に利用されてきた。これらの動・植物標本を利用した研究を円滑にし、極域の生物に対する理解を深めるため、当研究所のホームページでは蘚苔類標本データベース、蘚苔類・地衣類・淡水藻類画像データベース、動物標本画像データベースを公開している。
岩石試資料のHPへ
 第1次南極観測以来、東南極大陸のリュツォ・ホルム湾、プリンスオラフ海岸、やまと山脈、ベルジカ山脈、セールロンダーネ山地、エンダビーランド、マクマードサウンド、エルスワース山脈での地質地形調査によって採集された岩石・鉱物試料約11,000点を保管している。これらは隊次別、地域別に岩石資料庫の移動式試料棚に収納されており、またデータベースからの検索も可能である。最近では国際学術研究の一環として採集されたスリランカ、インド、アフリカ等の岩石・鉱物試料も蓄積されつつある。
 岩石・鉱物試料は、それらが採集された地域の地質学的・岩石学的研究にとって重要であるばかりでなく、南極
地域以外の大陸間の地質学的対比、さらには地殻・マントル物質の研究材料としても貴重であり、極地研研究プロジ
ェクト、共同研究、総研大大学院生のための研究試料、さらには博物館等での展示用標本として広く活用されている。