砕氷船ルイサンローランカナダ海盆チーム

海氷域を進むLSSL(2013.8.21)

現在地:北極海カナダ海盆域(北緯78度52分、西経149度57分)
チームメンバー:田中康弘(北見工業大学)、佐川玄輝(株式会社ウェザーニューズ)

壊れてしまったEM計。その形状からか、通称“スシ”と呼ばれている。

北極海を照らす夜中の太陽。その左右に、“幻日”と呼ばれる現象が見える。

砕氷船ルイサンローランのカナダ海盆航海は後半に入り、今回の航海計画では最北となる北緯79度に到達しました。疎(あば)らで解けかけた海氷が主だったこれまでとは違い、海面は厚みのある海氷でびっしりと埋まっています。その中を、船は前進後退を繰り返しながら、海氷を砕き航路を切り開いていきます。

このカナダ海盆区間では、カナダ・アメリカ・日本から、合わせて28人の研究者が乗り込んで、さまざまな観測を行っています。採取された海水などのサンプルは船内各所のラボで処理や分析にかけられ、船はさながら動く研究所のようです。また、毎日11時には研究者が集まるミーティングが行われ、その日の天候や海氷状況に基づいた観測計画や、昨シーズンに投入した観測ブイの回収計画が立てられています。スケジュールは過密で、限られた日数で効率的に遂行しなければなりません。

そんな中、私たちの観測は何のトラブルも無く順調に進んでいる、と言えれば良かったのですが、そうも言えない事態が起きました。船の脇に吊るして、下を流れる海氷の厚さを測るEM計が壊れてしまったのです。どうやら装置の内部に水が入ったのが原因のようです。いろいろと復旧を試みたのものの、結局船上での修理は断念せざるを得ませんでした。その分、今回は他の観測項目に集中します。

今週後半には海氷の上に乗って行う観測(氷上観測)があります。海氷上のアルベド(日射の反射率)の測定を行い、また、海氷を掘削してサンプルを取得し、その性質を調べます。このような観測は手間がかかる上、取れるデータも限られたものですが、地道に継続的に行っていくことで、北極海の海氷がどのように変わっているのかを示す貴重なデータとなります。

航海中は晴れることが少なく、すっきりしない曇り空が続くことが多いのですが、昨晩は奇麗に晴れ、数日ぶりに太陽を拝めました。またその左右には、幻日(げんじつ)と呼ばれる光の現象も見ることができました。夜中には短時間ながら陽も落ちるようになり、北極の夏が終わろうとしているのを感じます。