極域は地球上の冷源域として、大気・水・物質等の地域的なあるいは地球規模の循環の一翼を担っている。地球 上の淡水の大部分は極域に存在し、雪や氷として南極氷床や北極氷河を形成し、水循環、海面水位の変動に関わっ ている。また、海氷は、季節的に面積を大きく変動させ、大気と海との水や熱の交換に大きく寄与している。極域 の大気・雪氷・海洋を中心に研究を進めている。
 極域大気圏
 極域は局地的な汚染からもっとも離れた場所であり、各種の大気中の気体・物質の成分は地球のバックグラウンドと考えられる。また大気・物質の地球規模の循環に極域大気圏は大きく貢献している。極域大気圏の研究では、極域のデータを収集し、次の様な研究テーマに基づきデータの解析、研究を行っている。
  • 極域の大気・物質の循環に関する研究
  • 対流圏・成層圏の微量成分、エアロゾルの季節・経年変動の研究
  • 温室効果気体の経年変動の研究
  • 二酸化炭素の大気−海洋間の交換に関する研究
  • 大気中のエアロゾルや雲の放射特性と気候影響に関する研究
  • 極域の各種現象の素過程の研究とそのモデルへの応用の研究
図には「しらせ航海中のオゾンゾンデ観測から得られたオゾン混合比(ppbv)の緯度分布」(1988〜1990年の平均)を示した。しらせ航海中にオゾンゾンデを飛揚し大気中のオゾン濃度の変化を観測したところ、成層圏から対流圏へのオゾンの流れ込みが見られた。
 極域雪氷圏
 極域雪氷圏は、水やエネルギーの循環を通して、地球規模の気候変動や海面変動に大きな役割を果たしている。南極氷床の変動は地球の気候に影響を与え、また気候の変化は氷床変動に大きく寄与している。雪氷圏変動システムを明らかにするために
  • 氷床をとりまく気候と堆積環境の長期的変動の復元−氷床コア研究
  • 氷床の動力学的状態とその変動
  • 堆積環境の地域的特性の解明−氷床の質量収支状態の解明
を行っている。
 さらに上記の研究を支援するため雪氷コア掘削機・アイスレーダー・コア解析機器等の開発、NOAA、MOS、ERS、JERS等の人工衛星によるリモートセンシングのデータの活用なども進めている。
 特に氷期ー間氷期サイクルを含む過去35 万年の地球環境変動を研究するため、南極氷床の頂上である「ドームふじ基地」で氷床深層コア掘削計画を実施した。図には、ドームふじ基地付近の基盤地形と掘削孔の深度を示した。GPS とアイスレーダーによる観測結果である。
 極域海洋圏
 時空間的に多様な変化を示す海氷で占められる極域海洋は、世界の海洋深層循環や地球規模の気候形成に寄与している。南大洋ではインド洋区に注目して、ポリニア(薄氷域または開水面)も含めた海氷分布とその変動、海洋循環に関する観測を実施し、大気−海洋間および南北方向の熱・物質輸送機構の研究を行っている。また衛星および気象観測データを用いた広域の研究も実施している。北半球海氷域も研究対象として、大気−海洋システムに果たす海氷域の役割の解明を進めている。右の写真は南極昭和基地沖の海氷域を航空機によって撮影したものである。