極域科学を究めていく上で重要な観測・調査活動は、設営問題を除外して実施することはできない。南極観測事業の設営活動では、本研究所がその実施中核機関として、機械・建築・燃料・通信・航空・装備・食糧・医療などの多岐にわたる諸問題に対処している。これらの南極観測を支援する設営活動は、生活全般から時には観測手段までにおよぶ広範囲な事柄に関連し、殆どあらゆる理工学分野や生活科学分野の学術的な幅広い識見に基づいた技術力に依存している。しかし、自然環境の厳しい南極の設営活動では、国内の技術をそのまま適用できない部分も少なくないことから、極地に適する設営技術には未解決な問題が山積している。
ドームふじ基地とSM100S大型雪上車
 当研究グループでは、南極の設営活動が円滑に進むことを念頭にして、国内外の既存技術へ極地仕様を取り込んだ創意工夫や、現地施設の工学的な追跡データ取得による解析研究、さらには極地特有の環境条件に適応する新しい工学技術の開発研究などを目標に活動している。その研究体制は、多岐にわたる事柄に対応していく上には必ずしも十分な研究グループ構成であるとは言えないが、客員教官を中心として共同研究員との協力の下に、極地に特有な課題や環境保全など緊急性の高い課題について調査・研究を進めることとしている。当面の研究課題としては、1. 昭和基地主要部の建築物群のスノウドリフト障害の低減に関する研究、2. 基地の生活廃棄物の処理に関する調査・研究(南極の環境保護に関する国際的な監視体制強化への対応)、3. クリーンエネルギー利用に関する開発研究、4. 氷床上の建物が地吹雪により埋没する過程での不同沈下、ドリフト成長過程の継続測定による解析研究などを中心としている。
 自然エネルギーの利用
 昭和基地では、ディーゼル発電機などで使用する化石燃料をできるだけ削減するため、太陽と風力エネルギーの活用を進めている。太陽光では、太陽電池パネルを基地に設置し、1998年4月からディーゼルエンジン発電機との連系運転を開始した。南極は、高緯度で太陽高度も低いため、太陽光エネルギーの利用にはあまり向かないと思われがちであるが、年積算日射量は日本国内と同等であり、夏期には国内の約2倍の日射量がある。その理由として、空気が澄んでいること、晴天率が高いこと、雪からの反射が高いこと、気温が低いため電池モジュールの変換効率が良いことなどが上げられる。

▲太陽光発電パネル
 2000年には合計40kWのパネルが完成した。最終的には、60kWまで増設する計画を立てている。また、夏期宿舎の壁にソーラーパネルを取り付け、太陽熱による室内暖房の実験も行っている。このパネルには小さな穴を無数に明け、表面を黒色に塗装してある。この穴を通して取り入れた外気を太陽熱で加温するものである。さらに太陽熱温水器による温水の加熱などの実験も計画している。
 風力発電は、これまであすか基地で1kW 小型機の実験を行ってきた。この技術を応用し2003 年から昭和基地の補助電力源とするため、10kW 実験機の試験運転を行う予定である。日本国内と風況がかなり違い、最大風速が60m/s にも達すること、風速10m/s 以上の風は北東に集中して出現することなどが特徴である。そのため、ブレードのピッチを変え回転数制御を行うと共に、ヨーを固定したシステムでのデータ取得を計画している。現地での発電機本体の試験を終了した後、基地のディーゼル発電機に連系するシステムを設計・搬入することにしている。
▲ソーラーフォールを取り付けた第2夏期隊員宿舎