ArCS 北極域研究推進プロジェクト

成果報告

平成27年度成果

国際共同研究推進:テーマ4
北極海洋環境観測研究

実施責任者:菊地 隆(海洋研究開発機構)

活動実績
  • 「みらい」北極航海 (MR15-03) による渦集中観測
  • カナダ海盆、バロー海底谷やチャクチ海南部など環境変化の鍵となる海域での係留系時系列観測
  • カナダ砕氷船による北極海航海での現場観測
  • 地球シミュレータを用いた数値実験と詳細分析
  • 超音波氷厚計生データからの海氷厚データの導出
  • 衛星搭載型塩分センサーによる推定海面塩分値の精度評価
  • 既存の海洋化学観測データと新たな統計的手法を用いた炭酸カルシウム飽和度の北極海全域マッピング
  • 北極評議会における作業部会や専門家チームへの参加と、報告書作成への貢献 ほか
研究成果の公表

これまでの観測・解析結果を取りまとめた結果、査読付き英文誌に20本の論文(関連する他の予算(GRENE北極・科研費・運営費交付金など)による成果を含む)を発表した。

  • アラスカ州バロー沖の沿岸ポリニアの形成メカニズムを解明(Hirano et al., 2016, JGR-Oceans)
    係留観測、衛星観測、及び数値モデル実験の結果から、バロー沖に出現する沿岸ポリニヤ(疎氷域)が、強い北東風による海氷発散で起きる潜熱ポリニヤ(海氷生成)と、下層の高温水の湧昇と鉛直混合による熱供給で維持される顕熱ポリニヤ(海氷生産抑制)の両方の特徴を併せ持つHybrid polynyaであることを明らかにした。
  • 北極海河川氷の減少と積雪の効果(Park et al., 2016, J. Climate)
    北極域の河川にできる氷(河川氷、左写真参照)について、モデル実験とデータ解析から、温暖化による河川氷の厚さの減少、結氷時期の遅れ、春の解氷時期の早期化が進んでいることを明らかにした。またその要因として、冬季の気温上昇の影響以上に、河川氷上の積雪による断熱効果が強く効いていることを、モデルによる感度実験から明らかにした。
  • チャクチ海南部のBiological hotspotの形成・維持機構と植物プランクトン量の季節変化の解明(Nishino et al., 2016, Biogeosciences)
    太平洋側北極海の生物学的ホットスポットと言われているチャクチ海南部ホープ海底谷で行った係留系および「みらい」による観測の結果から、同海域で起きていた春季ブルーム(氷縁ブルーム)とともに、秋季ブルームが起きていることを捉えた。またその形成・維持機構を明らかにした。
  • 炭酸カルシウム飽和度の北極海全域マッピング(Yasunaka et al., 2016)