テーマ4
北極海洋環境観測研究
実施責任者:菊地 隆(海洋研究開発機構)
研究対象地域:北極海及びその周辺域(環北極域)、チャクチボーダーランド、チャクチ海、カナダ海盆、アラスカバロー沖
背景
北極海域は、予測を上回る急速な海氷減少に示されるように、地球温暖化による環境変化が最も顕著に表れている地域の一つとして認識されています。このような海氷減少は、北極海の温暖化・淡水化・酸性化の進行と密接に関係しており、海洋生態系や物質循環にも影響が及ぶことが危惧されています。さらには海氷減少とそれに伴う北極海域での大気-海氷-海洋相互作用の変化は、北極圏のみならず中・低緯度を含めて全球規模の気候変動や水循環にも影響を与えています。地球温暖化に伴って急速に進行する北極の環境変動とこれに関係する諸問題の関心が高まる中で、日本は2013年5月に北極評議会(AC)のオブザーバー国となり、2015年10月には「我が国の北極政策」を策定しました。北極に関する諸問題に対して科学的観点からさらなる国際貢献をすることは、日本の北極政策にも記載されている重要なテーマとなっています。
研究概要
本研究テーマでは、「北極域における海洋環境変動の実態の理解と、その低次生態系や気候学的な影響の評価」を実施します。具体的には、1)海氷減少に伴う北極海洋環境の変化と、水循環・気候変動との関係の理解、2)温暖化・酸性化によるプランクトンへの影響評価、3)北極海淡水収支の季節・経年変動の理解、4)アラスカ沿岸における海氷動態変動の理解を目的とします。
これらの目的を達成するために、1)海洋地球研究船「みらい」や砕氷船による国際連携における太平洋側北極海での現場観測、2)海洋環境変化のカギとなる海域で通年観測データを取得するための係留系時系列観測、3)海洋環境変化の影響を評価するための現場および室内実験、4)現状の詳細分析や想定される将来環境に対する評価のための数値実験など多様な手法を駆使して研究を進めます。
これらの研究活動を実施するためには国際共同・連携は必要不可欠であり、これまでの経験を踏まえて、米・加・ノルウェー・ドイツ・ロシア・さらにほかの国との共同研究を継続します。
本テーマ“北極海洋観測研究”の模式図
海外連携機関/国際プロジェクト
カナダ漁業海洋省(カナダ)、アメリカ海洋大気庁(NOAA、アメリカ)、アラスカ大学(アメリカ)、ノルウェー極地研究所(NPI、ノルウェー)、ノルウェー海洋科学研究所(ノルウェー)、アルフレッド・ウェゲナー研究所(AWI、ドイツ)、ロシア科学アカデミー(永久凍土研、シャーショフ海洋研究所、ほか、ロシア)、韓国極地研究所(KOPRI、韓国)*計画中、ほか
太平洋北極グループ(PAG)、 北極海生態系観測網プログラム(DBO)、国際北極大気観測システム(IASOA)、 CliC sea ice group、国際永久凍土学会(IPA)、 国際北極ブイ計画(IABP)、北極海モデル観測統合フォーラム(FAMOS)、 Synoptic Arctic Survey(SAS)、Ecosystem Studies of Sub-Arctic and Arctic Seas (ESSAS)、ベルモント・フォーラム課題「気候変動下における北極海洋システムの回復力と適応力」(RACArctic)、ほか
実施体制
実施担当者
氏名 | 所属機関 |
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菊地 隆 | 海洋研究開発機構 |
伊東 素代 | 海洋研究開発機構 |
木村 仁 | 海洋研究開発機構 |
西野 茂人 | 海洋研究開発機構 |
朴 昊澤 | 海洋研究開発機構 |
藤原 周 | 海洋研究開発機構 |
村田 昌彦 | 海洋研究開発機構 |
安中 さやか | 海洋研究開発機構 |
渡邉 英嗣 | 海洋研究開発機構 |
亀山 宗彦 | 北海道大学 |
原田 尚美 | 海洋研究開発機構 |
小野寺 丈尚太郎 | 海洋研究開発機構 |
喜多村 稔 | 海洋研究開発機構 |
氏名 | 所属機関 |
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木村 元 | 海洋研究開発機構 |
木元 克典 | 海洋研究開発機構 |
杉江 恒二 | 海洋研究開発機構 |
野口 真希 | 海洋研究開発機構 |
塩崎 拓平 | 海洋研究開発機構 |
川合 美千代 | 東京海洋大学 |
溝端 浩平 | 東京海洋大学 |
深町 康 | 北海道大学 |
大島 慶一郎 | 北海道大学 |
平野 大輔 | 北海道大学 |
高塚 徹 | 北海道大学 |
研究協力者
氏名 | 所属機関 |
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飯島 慈裕 | 三重大学 |
伊藤 優人 | 北海道大学 |
川口 悠介 | 東京大学 |
大島 和裕 | 環境科学技術研究所 |
石田 明生 | 常葉大学 |
池上 隆仁 | (公財)海洋生物環境研究所 |
氏名 | 所属機関 |
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石井 雅男 | 気象研究所 |
小杉 如央 | 気象研究所 |
笹野 大輔 | 気象研究所 |
遠山 勝也 | 気象研究所 |
遠嶋 康徳 | 国立環境研究所 |
石戸谷 重之 | 産業技術総合研究所 |
堀 正岳 | 国立極地研究所 |
研究対象地域(地図)
- ❶北極海及びその周辺域(環北極域)
- ❷チャクチボーダーランド
- ❸チャクチ海
- ❹カナダ海盆
- ❺アラスカバロー沖
ArCS通信
- ボードゲーム『The Arctic』体験会(2019年08月08日)
- 2018年 CCGS Louis S. St-Laurent 北極航海(2018年11月14日)
- 2018年アラオン号北極海航海(2018年09月20日)
- CHARSでの観測報告(2018年08月13日)
- サイエンティスト・クエスト特別編「どうなる?北極~海と生き物と私たち~」(in 日本科学未来館)開催報告(2018年03月16日)
- アラスカUtqiaġvik沖における係留観測(2018年01月09日)
- 2016年「みらい」北極航海(2016年11月09日)