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プロジェクト報告・成果

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プレスリリース 著者からのメッセージ
— ArCS IIニュースレターNo.3より —

ArCS II ニュースレターNo.3では、2021年夏から秋にかけて発表されたプレスリリースの著者に、研究にかけるご自身の思いやこれからの展望、こぼれ話などを語っていただきました。内容は、アイスコアダストの起源、氷河末端で起こる氷河流動、陸域生態系についての国際的なデータ解析についてなど、多岐に渡ります。
※所属はニュースレター発行時の情報です。

グリーンランド氷床に飛来するダストの起源、過去100年の変化が明らかに

永塚 尚子
(国立極地研究所 気水圏研究グループ)


グリーンランドには10年近く調査に赴き、氷床上に飛来する鉱物ダストの起源解明に取り組んできました。しかし、間氷期のアイスコア中のダストに関しては低濃度のために分析が難しく、長年の課題となっていました。今回、電子顕微鏡を用いた分析によって、グリーンランドのアイスコアダストの起源について過去100年の変動を明らかにすることに初めて成功しました。間氷期のアイスコアダストの起源の変化を知ることは、北極域の近年の環境変動に対する温暖化の影響を評価するために不可欠な情報であったので、今回その一端を解明することができ、感無量です。本研究で得られた新たな知見をもとに、今後のグリーンランドの環境変動予測に貢献していきたいです。

論文タイトル Variations in mineralogy of dust in an ice core obtained from northwestern Greenland over the past 100 years
掲載誌 Climate of the Past
掲載日 2021年6月21日
著者 Nagatsuka, N., Goto-Azuma, K., Tsushima, A., Fujita, K., Matoba, S., Onuma, Y., Dallmayr R., Kadota, M., Hirabayashi M., Ogata J., Ogawa-Tsukagawa Y., Kitamura K., Minowa, M., Komuro, Y., Motoyama, H., Aoki, T.
DOI https://doi.org/10.5194/cp-17-1341-2021

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世界初! 海底地震計を使い、氷河流動の検出に成功

エヴゲニ・ポドリスキ
(北海道大学 北極域研究センター)


グリーンランドの急速な環境変化を理解するためには、氷河の末端近くでの観測が不可欠です。本研究では、海域の地震観測のために使われている海底地震計をグリーンランド氷河末端近くの海底に設置しました。海底で観測することによって、氷の破壊や強風の影響を受ける地球上で最も騒がしく過酷な環境を回避でき、地震波ノイズの中に埋もれた微動の検出に成功しました。その微動は20年ほど前に日本で発見された断層がゆっくりと運動するスロー地震で生じるものに似ており、氷河が滑るときに生じていたことが明らかになりました。今回の研究の経緯はNature Podcastに掲載されており、私たちの観測機器に記録された海中音を聞くことができます。今後は、氷河末端近くの海底で長期的な観測を行いたいと考えています。

論文タイトル Ocean-bottom and surface seismometers reveal continuous glacial tremor and slip
掲載誌 Nature Communications
掲載日 2021年6月24日
著者 Podolskiy, E. A., Murai, Y., Kanna, N., Sugiyama, S.
DOI https://doi.org/10.1038/s41467-021-24142-4

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陸域生態系のもつさまざまな機能が3つの包括的機能で説明できることを解明

小林 秀樹
(海洋研究開発機構 地球環境部門)


今回の研究は、欧米の研究者が中心となった国際的なデータ解析による成果です。2010年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)とアラスカ大学の共同研究に始まり、ArCSそしてArCS IIと10年規模で継続しているアラスカ国際観測拠点での現地観測や、観測データの速やかなオープンデータ化が実を結んだものでもあります。今後はこのような国際共同研究による総合的な成果創出がますます重要になると思います。これからは国際的な共同研究にさらに主体的に参加して成果を出していきたいと思います。

論文タイトル The three major axes of terrestrial ecosystem function
掲載誌 Nature
掲載日 2021年9月22日
著者 Migliavacca, M., Musavi, T., Mahecha, M. D., Nelson, J. A., Knauer, J., Baldocchi, D. D., Perez-Priego, O., Christiansen, R., Peters, J., Anderson, K., Bahn, M., Black, T. A., Blanken, P. D., Bonal, D., Buchmann, N., Caldararu, S., Carrara, A., Carvalhais, N., Cescatti, A., Chen, J., Cleverly, J., Cremonese, E., Desai, A. R., El-Madany, T. S., Farella, M. M., Fernández-Martínez, M., Filippa, G., Forkel, M., Galvagno, M., Gomarasca, U., Gough, C. M., Göckede, M., Ibrom, A., Ikawa, H., Janssens, I. A., Jung, M., Kattge, J., Keenan, T. F., Knohl, A., Kobayashi, H., Kraemer, G., Law, B. E., Liddell, M. J., Ma, X., Mammarella, I., Martini, D., Macfarlane, C., Matteucci, G., Montagnani, L., Pabon-Moreno, D. E., Panigada, C., Papale, D., Pendall, E., Penuelas, J., Phillips, R. P., Reich, P. B., Rossini, M., Rotenberg, E., Scott, R. L., Stahl, C., Weber, U., Wohlfahrt, G., Wolf, S., Wright, I. J., Yakir, D., Zaehle, S., Reichstein, M.
DOI https://doi.org/10.1038/s41586-021-03939-9

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