EN メンバーズサイト
ログイン

活動報告

  1. HOME
  2. プロジェクト報告・成果
  3. 若手派遣報告
  4. グリーンランド北西部における海鳥と海洋生態系の調査

グリーンランド北西部における海鳥と海洋生態系の調査

若手人材海外派遣プログラム参加者:2024年度短期派遣
油島 明日香(北海道大学)

気候変動によって、グリーランドの氷河・氷床の融解が急速に進んでいます。特にグリーンランド北西部において、海氷や氷河の融解の増加に伴い、海洋生態系が変化することが懸念されています。気候変動が海洋生態系に与える影響を評価するためには、海洋環境と海洋高次捕食者の関係について明らかにすることが不可欠です。

私は、海洋高次捕食者である海鳥がどのような環境に集まるか研究しています。海鳥には、表面の餌を食べる表面採食者と、潜って餌を食べる潜水採食者がいます。このうち、表面採食者は氷河末端に集まることが知られています。しかし、潜水採食者が氷河付近の海洋環境に対してどのように応答するか不明です。そこで、氷河付近に生息する海鳥がどのような海洋環境の影響を受けるか調べるためにグリーンランド北西部に渡航し、調査を行いました。

(写真1)海洋末端氷河と海鳥

グリーンランド北西部に位置するBowdoin Fjord、MacCormick Fjord、Robertson Fjordの3つのフィヨルドで目視観察と海洋観測を行いました。海鳥を観察し、種、数、行動および位置を記録することによって、群集組成と分布を調べることができます。CTDプロファイラーという観測機器を使って、水温、塩分および濁度を記録しました。さらに表層水を採集し植物プランクトンを集めました。プランクトンネットを曳くことで、水面付近の動物プランクトンも採集しました。

(写真2)フィヨルド内で観察されたヒメウミスズメ
(写真3)海鳥目視調査の様子

また、カナック周辺で研究活動をしている研究チームによって、ワークショップが開催されました。ワークショップの目的は、現地住民に研究成果を伝え、意見交換をすることでした。私はこのワークショップで現地住民に向けてBowdoin FjordとRobertson Fjordにおける海鳥の分布に関する卒業研究の結果を伝え、ディスカッションに参加しました。発表の際に現地の言葉を取り入れると、住民の方が内容を理解しやすくなり、より多くの住民がディスカッションに参加すると感じました。現地の言葉を覚えることの重要性を学びました。

(写真4)カナックで開催されたワークショップの参加者で記念撮影

現在、海鳥の目視調査、海洋観測およびプランクトン採集によって得られたデータを解析しています。水温、塩分、濁度および深度などの環境パラメータやプランクトン群集と、海鳥の密度の関係を調べる予定です。そして、海鳥の分布と採餌行動に違いをもたらす要因を特定したいと考えています。本渡航によって得られたデータの結果を現地住民に早く伝えたいと強く思っています。

今回の派遣では、ArCS IIプロジェクトの関係者の方々には大変お世話になりました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。

若手人材海外派遣プログラム採択結果および報告書はこちら