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北極関連トピックス解説

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砕氷機能を有する北極域研究船の新規建造決定

山口一
東京大学大学院新領域創成科学研究科

令和2年12月下旬に令和3年度政府予算案が閣議決定され、砕氷機能を有する北極域研究船の新規建造開始が実質上決定された。建造期間は5年程度とされている。現在、国立研究開発法人海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」が毎夏北極海観測を実施して多くの先進的成果を出しているが、砕氷船でないため、海氷域に入ることができない。新しい北極域研究船は厚さ1.2mまでの平坦氷を連続砕氷できる予定なので、海氷観測など多くの新しい観測が可能となる(表1、図1)。

北極域研究船の想定要目()内は「みらい」
全長 128m(128.5m)
23m(19m)
深さ 12.4m(10.5m)
喫水 8m(6.9m)
国際総トン数 13,000トン(8,706トン)
砕氷能力 3.0ktにおいて平坦1年氷 1.2 m(ー)
耐水能力 PC4相当(PC7相当)
乗員 99名(80名)
表1:新規建造が決定した「砕氷機能を有する北極域研究船」と海洋地球研究船「みらい」との比較
耐氷能力は、厚い一年氷内で通年航行が可能なPC4相当。1.2mまでの平坦氷を連続砕氷できる。一方の「みらい」は、砕氷能力がないので海氷域には入れない。
北極海における観測活動イメージ
図1:北極海における観測活動イメージ
気象、大気、海氷、海洋、海底などについて、多様な観測が可能になる。

竣工はArCS IIの次の北極研究プロジェクトの2年目となるが、ArCS II期間中においても北極域研究船を念頭においた発展性のある研究を実施し、竣工後すぐに研究成果を生み出せるようにしておくべきである。この船は時代の要請に対応して、国際研究プラットフォーム、多様性、環境保全に配慮した設計となる予定である。海洋研究開発機構において検討している同船の主な特徴を以下に記す。

  • 「みらい」レベルの気象観測や海洋観測が可能な観測設備と「みらい」には搭載していない科学魚群探知機等の新たな設備の搭載
  • 海氷域における必要十分な砕氷・耐氷性能と通常海域を含む観測性能を両立するための船型
  • 北極海の海氷域を安全性かつ効率的に運航するための「氷海航行支援システム」の搭載
  • 研究船では世界初となるデュアルフューエル(舶用燃料油と液化天然ガスの二元燃料)機関の採用による環境負荷低減、低燃費の工夫
  • 無人探査機の運用や採水観測等を安定的に実施するために必要な定点保持機能と効率的な推進システムの搭載
  • 遠隔操作型の無人探査機(ROV)や自律航行可能な無人探査機(AUV)等の運用設備
  • 安全確保、海氷等観測用のヘリコプターの運用機能
  • 十分なラボスペース、優れたネットワーク等の世界レベルの研究・分析環境の整備
  • 国際プラットフォームとして、ユニバーサルな居住環境の実現
  • 豪雨等による自然災害発生時の被災地支援対応

日本の北極環境研究の実質的な推進・調整組織であるJCAR(北極環境研究コンソーシアム)に北極域研究船利用計画WGを設けている通り、この船は広く北極研究コミュニティの要望を聞き、最高の成果が得られる様にして行きたいと考えている。