カナダ海盆係留系設置チーム① 観測便り

いざ北極海カナダ海盆へ!(2012.8.12)

現在地:北極海カナダ海盆(北緯75度12分、西経150度57分)

チームメンバー:小野純(極地研/東大院新領域)、平野大輔(極地研/東京海洋大)

写真1 ブリッジから見たバロー沖の海氷分布

8月2日(木)

クグルクツク空港でレグ1担当の北西航路観測チーム(山口:東大、柴田:北見工大)と再会し、入れ替わるようにしてレグ2担当のカナダ海盆係留系チーム(小野:極地研、平野:極地研をはじめ日本から計6名)がカナダ沿岸警備隊砕氷船「ルイサンローラン号、以降LSSLと呼ぶ」に乗船しました。

レグ2のチームは海洋班と海氷班で構成されており、船上および氷上での様々な観測を行い、それぞれの研究課題に取り組みます。海洋班(平野)は氷上からの海洋観測(CTD観測・時系列水温観測・ADCP観測)およびGRENE基盤係留系設置作業を行い、海氷班(小野)は海氷現場観測のスペシャリストである舘山さんと一緒に、海氷厚、海氷被覆量、海氷分布状況、放射量、アルベドの観測を行います。

船は、新しく加わったクルーメンバーのトレーニングのために一日半ほどクグルクツク沖で停泊し、8月4日の昼過ぎになってようやく出航しました。何はともあれ、小野と平野にとって初めてとなる北極海の航海が幕を切って落とされたのでした。船が動き出したので、レグ1から引き継いだ「しぶき計(飛沫を測定する機材)」と「マリンステーション(船体の動揺を測定する機材)」による観測を開始しました。

8月5日(日)

最初の観測点に到着。本航海におけるルーチンで実施する海洋観測は、CTD・採水観測・ADCP観測やプランクトンを採集するボンゴネット観測等ですが、様々な国からのチームが多岐にわたる観測を行っていきます。

8月6日(月)

ガツーンという何かが船体にぶつかる音が聞こえてきました。海氷がついにその姿を現したのでした。海氷の密接度としては3/10、割れて90度回転した時に見えた厚さは1.0-1.5 m 程度でした。うっすらと雪に覆われている氷や黒く汚れている氷が所々に観られました。

写真2 左舷から見たバロー沖の海氷分布と電磁誘導式氷厚計(EM)

写真1 野生のホッキョクグマ
早朝のバロー沖、本航海初めてのホッキョクグマに遭遇しました。寂しげに見えますが、家族を探しているのでしょうか?

8月8日(水)

バロー沖の測線(北緯71度20-48分、西経150度42分-152度08分)で海氷域(写真1)に入ったので、「電磁誘導式氷厚計」と「マイクロ波放射計」を用いた海氷厚観測を開始しました(写真2)。

8月9日(木)

バロー沖航行中、広大な海氷の上に一見寂しげに見える一匹のホッキョクグマと出会いました(写真3)。本航海では初めてのホッキョクグマです。しばらくLSSLはゆっくりと航走し、その間彼?彼女?も同じ方向にてくてくと歩いてくれたので、写真を取り続けました。当たり前ですが、いつしか日本の動物園で見たホッキョクグマとは全く異なる雰囲気を醸し出していました。
 我々の観測はまだ始まったばかりですが、この先いったいどのようなドラマが待ち受けているのでしょうか?次回の観測便りも乞うご期待下さい。

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