4月に入り、気温もだんだん低くなってきました。夏期には高温と強い日射のため、海氷の表面が溶けてパドルと呼ばれる水たまりができます。このような所は、厚さは充分でも雪上車や橇の通行ができません。しかし、昭和基地周辺の海氷表面もすべて氷になり安全に通行できるようになりました。観測隊は野外観測のため、雪上車やスノーモービルなどで海氷を渡って内陸や沿岸にある各野外観測地点に向かいますが、海氷上のどこを通ってもよいわけではありません。クラックやプレッシャーリッジという海氷が盛り上がっている危険箇所が至る所にあります。そのため、走行に適したルートを設定する必要があります。これをルート工作と言います。各野外観測地点までおよそ500mから2km毎に旗竿を立て、ルート上の各ポイントの座標や相対方位、ポイント間の距離などの情報を「ルート方位表」としてまとめます。海氷上を通って野外観測に向かう際にはこのルート方位表と地図、コンパス、GPSを持ったうえで行動します。
4月4日、53次隊では初となるルート工作が実施されました。昭和基地からほど近い西オングル島にある観測施設まで1ポイントずつ旗を立て、氷の厚さを測りながら慎重に進んでいきます。約2時間で、延べ5kmほどのルートが完成しました。
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