この日、日出は11時58分、日没は12時40分でした。この日没の瞬間から、昭和基地は「極夜」に入りました。およそ44日後、7月13日12時02分の日出まで、太陽は昇りません。幸い、天気は時折晴れ間ものぞく薄曇でしたので、氷山群の彼方に沈み往く太陽を逃すまいと、多くの隊員がカメラを構えていました。
もう太陽を目にすることはしばらくないんだ、と思っていた3日後の6月2日に、地平線に太陽が顔を出しました!しかも、形が四角です。地表面付近の気温が非常に低下すると、空気の密度が大きく変化して、通常は直進する光が曲がって進む現象が起こり、これを「蜃気楼」と呼びます。昭和基地でも、地平線付近の氷山が、地平線から浮き上がって見えることがよくあります。「四角い太陽」も蜃気楼の一種で、本来、地平線の下に隠れて見えないはずの太陽の一部が、地平線から上に出ているように見えたのです。蜃気楼であっても太陽であることに変わりはないので、まるで太陽からおまけをもらったような気持ちになりました。
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