国際的に利用される昭和基地上空のオゾン観測データ
2014年11月24日
オゾン分光観測は、太陽の光を利用してオゾン全量を測定します。極夜とその前後の期間(おおよそ5月から8月上旬の期間)を除けば、雪などの日を除いて毎日観測ができるので、日々のオゾン全量の変動を細かく知ることができます。
昭和基地で行っている観測のうちの1つに、昭和基地上空のオゾン観測があります。これまでも、この昭和基地NOW!では何度かご紹介してきましたが、今回は少し視点を変えて、この観測データがどのように利用されているのかをご紹介しましょう。
昭和基地は、国際連合の中の1つの組織である世界気象機関(World Meteorological Organization)の全球大気監視(Global Atmosphere Watch)計画の観測点に指定されています。昭和基地で観測して得られたオゾン層に関する観測データは週に数回世界気象機関へ送られ、他の観測基地から送られたデータとともに、南極のオゾンホールを監視するために利用されています。世界気象機関では2~3週間ごとに最新のオゾンホールの状況をまとめて、南極オゾン速報(Antarctic Ozone Bulletin)として最新のオゾンホールの状況を発表しています。
今年も昭和基地ではオゾン量の減少が見られました。8月から徐々にオゾン全量(地上から大気上端までの上空のオゾンの総量)は少なくなっていき、10月上旬に今年の最小値を記録しました。この時のオゾン全量はオゾンホールが発生していない時の半分ほどしかありませんでした。日本国内では、ここまで大きなオゾン全量の減少は起こりませんので、30年ほど前に昭和基地で最初にこの現象を観測した隊員が、あまりに急変する観測値に驚き、観測機器の故障を疑ったという話を思い出しました。
南極のオゾンホールは今後徐々に縮小すると予想されていますが、現在も南極上空では大規模なオゾンホールが形成されており、昭和基地では今後も継続して昭和基地上空のオゾンを観測していきます。
世界気象機関が発行している「南極オゾン速報」に掲載された、今年の昭和基地の観測結果です。昭和基地はオゾン観測を行っている南極の他の基地から1,000キロ以上も離れているため、昭和基地の観測結果は南極のオゾン層の状態を知る上で貴重なデータとなっています。
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