ArCS 北極域研究推進プロジェクト

研究成果

研究成果

北極域研究推進プロジェクト(ArCS)は、国際共同研究の推進、北極域における研究・観測拠点の整備、若手研究者および専門家の北極関連研究機関あるいは会議への派遣等の取り組みを実施しました。この活動は、2015年に決定された『我が国の北極政策』にのっとっており、その骨子である「日本が北極問題の解決に科学をもって貢献し」、「北極域での秩序ある持続可能な発展に主導力を発揮する」ことを実現したものです。また、同様に重要なこととして、社会に対し本プロジェクトの科学的成果を積極的に提供するため、情報発信の方策を準備し実施しました。

科学的成果

本プロジェクトの目的達成のための基礎となる国際共同研究は、それぞれの課題設定にもとづいて北極の環境変化についての新たな知見を見出すべく研究を行う自然科学系テーマ(テーマ1~6)、人文科学・社会科学を扱うテーマ(テーマ7)、データマネジメントを行うテーマ(テーマ8)の8つが、主に北極圏国の研究機関と連携する形で、研究・観測拠点や海洋地球研究船「みらい」などの研究基盤を有効に活用し研究が進められ、多数の学会発表・論文発表につながりました。プロジェクト全体を通じて、以下のような特徴的な成果をあげてきたといえます。すなわち、A)日本のこれまでの北極研究による蓄積に立脚して国際的に認知された成果をあげていること、B)日本が提案や議論を主導した国際的な観測計画から多くの成果があがっていること、あるいは日本の測定技術が基準となるなど、世界の調査・観測を牽引する役割を担ったこと、C)異分野横断的な研究として、特に北極の地域住民と情報交換を行いながら実施する調査観測スタイルや環境教材の作成、教育ツールの作成などにおいて、今後の研究のモデルケースとなったことです。

研究基盤

北極域の研究・観測拠点の整備

プロジェクト開始以降、研究・観測拠点数とその設置国をともに増加させ、現地の国々や国際的な研究体制への参加を通じて日本の北極研究における貢献を示しました。ノルウェーやグリーンランドでの継続的な観測体制の維持により、信頼性の高い長期データや調査成果が得られるとともに、特に、ロシアと米国の観測タワーを維持し、気象関係や植生のデータを取得したことで、積雪と植生の関係などの北極域特有の現象を多項目かつ長期にわたり取得できる世界的にも稀有な拠点の確保が可能となりました。

人材育成・専門家派遣

プロジェクトにより多数の若手研究者が北極の研究議論の観測の場に送り込まれました。さらに、当初研究者のみとしていた若手研究者海外派遣支援事業の支援対象を2017年度に民間にも広げ、短期派遣の形で北極関係の各種国際会議に派遣し、北極を取り巻く社会的な状況の理解と他国からの出席者との会話を促進しました。北極評議会(AC)をはじめとする北極関連会合への専門家派遣を行い、北極の環境変化の把握とその対応を広く議論し、日本がその活動に貢献できることを積極的に示しました。これは日本が北極を経済活動の場と一義的に捉えているわけではないことを示すことにも有効です。

データマネジメント

北極域データアーカイブシステム(ADS)がデータセンターの役割を担い、プロジェクトで得られた各種研究データの収集・保管、データ活用を進めました。物理データから文化人類学的なデータまで、多岐にわたる北極研究のデータやその情報がひとつのシステムに集約・公開されるのは世界的にも少数といえます。この特徴的なデータアーカイブを通じて、北極研究の国際協力が強化されることを、また社会との連携が行えるという考えを実践しました。

各メニュー・テーマの成果

国際共同研究の推進

テーマ1:気象・海氷・波浪予測研究と北極航路支援情報の統合
実施責任者 猪上 淳(国立極地研究所)
テーマ2:グリーンランドにおける氷床・氷河・海洋・環境変動
実施責任者 東 久美子(国立極地研究所)
テーマ3:北極気候に関わる大気物質
実施責任者 小池 真(国立極地研究所)
テーマ4:北極海洋環境観測研究
実施責任者 菊地 隆(海洋研究開発機構)
テーマ5:北極気候変動予測研究
実施責任者 羽角 博康(海洋研究開発機構)
テーマ6:北極生態系の生物多様性と環境変動への応答研究
実施責任者 平譯 享(北海道大学)
テーマ7:北極の人間と社会:持続的発展の可能性
実施責任者 田畑 伸一郎(北海道大学)
テーマ8:北極域データアーカイブシステム
実施責任者 矢吹 裕伯(国立極地研究所)

国際連携拠点の整備

実施責任者:榎本 浩之(国立極地研究所)

若手研究者派遣による人材育成及び国際連携

実施責任者: 齊藤 誠一(北海道大学)

AC等北極関連会合への専門家の派遣

実施責任者:榎本 浩之(国立極地研究所)

成果報告書

※単年度の成果報告書に含まれる論文等の研究成果は、その後の精査により、取り扱いやステータスが変更になっている場合があります。本プロジェクトの最終的な研究成果一覧は「研究業績」からご確認ください。
※2015年度の国際共同研究推進メニューは一部現在の研究テーマと異なります。