ArCS 北極域研究推進プロジェクト

国際共同研究推進

テーマ7
北極の人間と社会:持続的発展の可能性

ビーバーのダムに隙間を開ける内陸アラスカ先住民 提供:近藤 祉秋(北海道大学)

本テーマは他の自然科学の研究と連携し、研究成果をいわゆるステークホルダーに効果的に伝えるという役割を担っています。北極域における経済開発の持続可能性を考察するという目的を設定し、1)北極海航路の利用と資源開発、2)環境と人間の相互作用、3)北極ガバナンスの3つの観点から研究を行いました。また、1)~3)を縦断する形で数多くの国際シンポジウムやセミナーを開催しました。

1)では北極海航路、資源開発、通信について研究を進め、貨物輸送の動向分析、氷海航行の実態把握と航行可能性の分析、海氷状況の整理、貨物輸送のコスト分析等を行いました。

北極海を航行するLNG船(2018年作成パネル「Our activitiers in the Arctic」より)

2)ではロシアのサハ共和国、グリーンランド、アラスカを舞台に、自然科学研究と連携してフィールド調査を行いました。サハでは永久凍土融解の状況とその地域住民の生活への影響について、文化人類学、地理学、歴史学、地質学、環境生態学の研究者が共同で調査にあたる一方、環境経済学の視点から森林火災の影響についての研究を進め、環境教育教材の作成も行いました。内陸アラスカとグリーンランドでは、野生動物(ビーバー、キングサーモン、クジラ等)と人間の関係の理解に取り組み、捕鯨の捕獲枠算定、環境モニタリングの制度化といった事象の考察を行いました。このような取り組みは、科学的な手続きを経てうみ出される知識と、先住民や地域住民の持つ在来知の、有機的な結合のテストケースとなると考えられます。

環境教材

3)では北極国際法政策研究、北極の安全保障環境に関する研究、非生物資源開発をめぐるガバナンスに関する研究、さらには温暖化にともなう地政学的環境の変化が北極国際関係にどのような変化をおよぼしたかに関する研究が行われました。

また、ACの作業部会に関する意見交換会や、「北極に関する政府と研究者との懇談会」を通じた政府関係者との意見交換をふまえ、政策決定者向け報告書を作成しました。

本テーマの成果はまとまった形として、田畑 伸一郎・後藤 正憲編著『北極の人間と社会:持続的発展の可能性』として2020年2月に出版しました。

テーマの背景や概要

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研究業績

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テーマ7の活動により得られたデータの情報

調査・観測