北西航路観測チーム 観測便り

クグルクツク到着(2012.7.31〜8.2)

現在地:カナダ・クグルクツク(北緯67度51分、西経115度08分)

チームメンバー:山口一(東京大学)、柴田啓貴(北見工大)

ケンブリッジ・ベイの近く。鏡の様な海面。船が造る波だけ。

30日深夜に海氷域を抜けた後、船は順調に航海を進めて31日朝にケンブリッジ・ベイに到着した。夕方までそこに停泊した後、今航海の到着地であるクグルクツクを目指した。船長初め、多くの船員がクグルクツクで交代する。31日昼前に霧も雲も晴れ、その後は快晴続きとなった。海も鏡のごとく穏やかで、波浪はほとんど無し。当然船体動揺も無し。我々は、科学チーム主任に提出する英文要約レポートの作成、取得したデータの整理と一次解析、クグルクツクで入れ替わるカナダ海盆海域観測メンバーへの引き継ぎ資料作成、自分の荷造り等々で大忙し。

今の季節の日本を考えると妙な表現だが、「暑い!」。今航海中、気温が氷点下になることは一度も無かったが、それでも外に出る時は防寒の用意をした。しかし今はシャツ一枚でも暑い。半袖シャツが欲しい。

クグルクツクの海岸から上る朝日。

船の巨大なプロペラシャフトとスラスト軸受。

クグルクツク空港の海岸から見た錨泊中のルイサンローラン号。

8月1日午後、クグルクツク到着。これまで立ち寄ったレゾリュート、ケンブリッジ・ベイも同じだか、クグルクツクにもルイサンローランが横付けできる様な岸壁は無い。船は沖合に錨泊し、船搭載の小型ヘリ1機によるピストン輸送で、荷物と人員をクグルクツク空港まで運ぶ。それが8月2日朝から始まった。我々科学者グループの輸送は最後であり、待ち時間を利用して、親切な船員さんがエンジンルームを案内してくれた。昼頃、無事クグルクツク空港に降り立つことができた。ほどなく、カナダ海盆域観測チームがイエローナイフより空路クグルクツク空港に到着し、無事交代を終えた。我々は彼らの観測航海の成功を祈りつつ、帰国の途についた。

数値計算や人工衛星観測で得られる氷況データは貴重なものであるが、それだけでは航行に必要な情報として十分でない。それは7月30日の航行データが如実に物語っている。何をどの様に選別して加工してゆけば航行に直接役立つ情報になるのか、研究は緒についたばかりであるが、カナダ多島海という複雑な海域に付いて初めてその基礎となるデータが得られた。詳細な解析を急ぎ進めて総合的融合的研究に役立てる。また、今後の観測研究の改善にも役立てる。様々なサポートを惜しみなく提供して下さったGRENE北極気候変動研究事業事務局並びにご関係各位に厚く御礼申し上げる。