ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成29年度若手研究者海外派遣報告:アラスカ大学地球物理研究所での滞在とLeConte氷河での現地観測の報告

アラスカ大学フェアバンクス校の地球物理研究所に2017年5月から9月まで約4ヶ月滞在しました(写真1)。滞在中の目的はこれまでにパタゴニアやグリーンランドの氷河で取得した現地データの解析及び議論と、アラスカの氷河で現地観測を実施し共同研究体制の構築や氷河の地域間での比較研究を進めるためです。

アラスカ大学滞在中には、特に氷河のカービング(氷山崩壊)について解析を進めました。カービングは氷河が質量を失う重要なプロセスの一つですが、現地観測が困難なことからその理解が遅れています。そこでカービングによって発生する津波に注目してカービング量の定量化やカービングの発生メカニズムを研究しました。さらに現地観測を実施する氷河について人工衛星画像の解析を行いました。1970年代から現在にわたる氷河の後退や表面高度の低下、表面流動速度の変化を定量化することができました。

現地観測はアラスカの州都ジュノーの近くに位置するLeConte氷河で実施しました(写真2)。アラスカ大学、オレゴン大学、オレゴン州立大学の共同プロジェクトに参加させてもらいました。アラスカ大学が氷河変動を、オレゴン大学、オレゴン州立大学がフィヨルドでの海洋観測をそれぞれ担当し、両者の視点から氷河末端での質量損失メカニズムに迫るというプロジェクトです。私は、カービング津波の測定によりカービングの定量化やフィヨルドでの水温、塩分、濁度、採水を実施し氷河末端の端面が融ける速度を計算するためのデータを取得しました(図1)。

 今回の滞在や観測を通して新しい人脈の形成や共同研究の可能性を見出すことができました。多くの研究者との議論は今後研究を進めていく上で大きな財産となりました。滞在に際して多くの方々にお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

滞在中の様子はこちらからご覧になれます。

箕輪昌紘(北海道大学)


アラスカ大学地球物理研究所 地球物理研究所


LeConte氷河

LeConte氷河で測定したカービング津波