ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

極域協力研究センター第4回シンポジウム「北極資源開発の持続可能性と国際法」の開催

神戸大学極域協力研究センター(PCRC)は、2018年12月17日から18日までの2日間、国際シンポジウム「北極資源開発の持続可能性と国際法」を開催しました。PCRCは、北極における国際法政策課題を研究すべく、2015年10月に設立され、同年12月には北極国際法秩序の現状を俯瞰するシンポジウム(リンク先:英語ページ)、2016年7月には北極海における法秩序形成を論じる第2回シンポジウム(リンク先:英語ページ)、2017年12月には北極法秩序形成における非北極国/アクターの役割を論じる第3回シンポジウムを開催しました。

今回の第4回シンポジウムでは、北極域における鉱物資源開発を特に題材に、国連持続可能な開発目標(SDGs)の基本理念である持続可能性と経済・環境・社会面の統合をキーワードにしつつ、ルールに基づく北極鉱物資源開発のガバナンスのあり方について議論をしました。今回のシンポジウムでは、国内外から社会科学だけでなく自然科学の研究者や、先住民団体及び産業界といった多様なステークホルダーが報告・議論を行い、国内外の研究者、政府関係者(在京大使館関係者含む)、実務家、大学院生など計65名の方に参加いただきました。

シンポジウムの初日は、グリーンランドにおける資源開発問題を中心に、Rachael Lorna Johnstone教授(グリーンランド大学北極石油ガス研究センター長)やTukumminguaq Nykjaer Olsen女史(グリーンランド・イヌイット極域評議会特別補佐)、杉山慎教授(北海道大学低温科学研究所)、高橋美野梨助教(北海道大学北極域研究センター)等から報告があり、法学、先住民、自然科学、政治学という多様な視点から議論が行われました。2日目は、経済・ビジネスの観点から見た持続可能性につき、Bruce Harland氏(北極経済評議会・責任ある資源開発作業部会共同議長/Cowley Maritime Corp.副社長)、原田大輔氏(石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査課長)ならびにマレーシアの弁護士であるKong Sun Lim氏(Dorairaj, Low & Teh法律事務所)等から報告がなされ、パネリストや一般参加者の間で活発な議論が行われました。PCRCのシンポジウムでは討議の時間を長く設定しており、報告者、ディスカッサント、聴衆との活発な議論を経てより深い考察を得ることができました。

PCRCでは、シンポジウムの成果を書籍としてまとめており、これまで第2回シンポジウムの研究内容をまとめた『北極国際法秩序の展望:科学・環境・海洋』(東信堂、2018年)や、第3回シンポジウムの研究内容をまとめたEmerging Legal Orders in the Arctic: The Role of Non-Arctic Actors (Routledge, 2019)が発刊されています。今回のシンポジウムの学術的成果も、極域専門雑誌の最高峰Polar Record誌の特別号として、出版する方向で準備が進められています。

写真付きのシンポジウムの様子は、下記URLからご覧下さい。
http://www.research.kobe-u.ac.jp/gsics-pcrc/ja/activities.html#4thsympo_report

本田 悠介/柴田 明穂(神戸大学/テーマ7実施担当者)