ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成30年度若手研究者海外派遣報告:グリーンランド氷床の表面反射率データの解析

グリーンランド南西部における氷河表面の反射率データの解析を行うため、イギリスのアベリストウィス大学に2018年11月26日から12月14日までの約3週間にわたって滞在しました。

近年、グリーンランド氷床の融解が急速に進んでいることが明らかになっています。この融解には、地球温暖化だけでなく、氷床表面の反射率の低下(暗色化)が寄与していると報告されています。反射率低下の要因は、氷河上での微生物の繁殖や黒色炭素や鉱物ダストなどの沈着、雪氷粒子の形態変化や含水率の増加などで、これらの要因がそれぞれ反射率低下に寄与する度合いや、反射率の時空間変化を把握することは、今後の融解を予測する上で重要です。

今回の滞在では、氷床表面の反射率の野外観測データの解析と議論を行いました。イギリスでは、グリーンランド氷床の暗色化プロセスの解明を目的とした “Black and Bloom” というプロジェクトが進んでいます。今回は、このプロジェクトの一環でグリーンランド南西部において集中的に観測された反射率データを、共同研究として利用させていただきました。今後も共同研究を続け、反射率の空間分布と氷床上の微地形の関係や、気象データとの関連について解析を行っていく予定です。

滞在中には様々な交流の機会を得ることができました。アベリストウィス大学の氷河研究グループには博士課程の学生が多く、日常会話を交わしたり、彼らの研究について聞かせてもらったりすることはとても良い刺激になりました。また、私が修士課程で研究した日本国内の雪氷藻類についてセミナー発表を行い、氷河研究グループの先生や学生と情報交換を行いました。

大学があるアベリストウィスはウェールズ西部に位置する小さな街で、西には海、他方にはずっと緑の丘が広がる、のどかでとても素敵なところでした。大学では寮や図書館などの設備が充実しており、快適な研究生活を送ることが出来ました。3週間と短い滞在でしたがこの土地にすっかり愛着が湧き、今度はもっと長く滞在してじっくりと研究をする機会を得られたらと思うようになりました。

今回の派遣では多くの方々にお世話になり、おかげさまでとても良い滞在となりました。共同研究を始めるきっかけにもなり、嬉しく思っています。ArCS、そしてご支援いただいたすべての方々に、心より感謝いたします。

渡邉 茜(千葉大学)


大学から望むアベリストウィスの街


アベリストウィス大学の地理学・地球科学研究棟