ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

北極域氷河研究のワークショップ参加報告

北極域氷河の動態と質量変動について議論するワークショップが、2019年1月21-23日にノルウェーのイェイロで開催されました。国際北極科学委員会(IASC)傘下の北極域氷河研究ネットワーク(NAG)が主催するワークショップで、今年で15回目を迎えます。

近年の動向として、雪氷・氷河学、海洋学に精通した研究者同士の研究連携に加え、生物学・化学・物理学の分野横断的な課題解決が強く求められています。ここで課題となる、氷河氷床の質量損失および、氷河氷床と海洋・海洋生態系との相互作用は、IASCがまとめるSnow, Water, Ice, Permafrost in the Arctic(SWIPA)の最新レポートで大きく取り上げられています。本ワークショップでも、2018年よりIASCのMarine WGとCryosphere WGが分野境界研究課題として掲げる"The importance of Arctic glaciers for the Arctic marine ecosystem"が特別セッションになっています

本セッションで、私は、カービング氷河前のフィヨルドの物質循環過程に関する報告を行いました。また、日本からは気象庁気象研究所の庭野匡思研究官も初参加し、雪氷放射過程や積雪変質過程などの物理モデルの高度化に向けた取り組みを紹介しました。私は2017年より継続して本ワークショップに参加しています。この3年で海洋研究者の参加が増え、氷河と海洋・海洋生態系との相互作用に関する研究は、かつてないほど注目を集めています。当該研究分野における日本の立ち位置を、Marine WGとCryosphere WGの両コミュニティーに積極的にアピールする努力が必要であると感じました。

NAGの詳細はこちらで見て頂けます。

漢那 直也(北海道大学/テーマ2研究協力者)


2019年ワークショップの全体写真(Thorben Dunse氏提供)