ArCS 北極域研究推進プロジェクト

ArCS通信

平成30年度若手研究者海外派遣報告:太平洋側の北極海における海底堆積物試料解析

私は、ArCS若手研究者海外派遣支援事業の助成を受けて、2019年2月13日から4月14日にかけて米国のウッズホール海洋研究所へ滞在しました。

研究所滞在中には、米国の砕氷船Healyによって採取した海底堆積物試料を戴き、北部ベーリング海、チャクチ海およびボーフォート海の珪藻類の休眠期細胞群集を調べました。休眠期細胞とは、水柱の環境が不適になると形成される、高い耐久能力を有する「タネ」のことです。水柱内の珪藻類群集は季節的消長が激しいのに対し、堆積物中の珪藻類の休眠期細胞群集は、長い期間をかけて水柱から沈降し、堆積したものであることから、海氷の経年変動など、比較的長期的な環境の変化を反映し得ることが考えられています。今回、北極域において、海氷の後退時期が異なる海域で休眠期細胞群集を調べたことにより、珪藻類休眠期細胞群集の水平分布にも海氷の分布が大きく関係していることが分かりました。今後、さらに環境と休眠期細胞群集との比較を詳細に進める予定です。本研究のように、北極域の広範囲において休眠期細胞群集を調査した例はなく、本事業のおかげで貴重な結果を得ることができました。

今回のウッズホール海洋研究所への滞在では、研究者や技術者の方々と英語で意見交換をしたり、研究所主催の様々なセミナーへ参加してみたりと、非常に有意義な時間を過ごすことができました。また、日々の生活では、週に一度教会で行われている英語教室へ通ったり、ホームパーティーへ参加したりと、アメリカの文化に触れる機会も多く得ることができました。調査船の寄港地以外での海外滞在経験がなかった私にとって、本滞在のすべてが刺激的であり、貴重な経験となりました。この滞在での出会いや経験を、今後の研究生活へ活かしていきたいと思います。

最後になりましたが、ArCS若手研究者海外派遣支援事業関係者の皆様、受入研究者のDonald Anderson博士をはじめ、今回の滞在をご支援して戴いた関係者の皆様に深く御礼申し上げます。

深井 悠里(北海道大学)


研究室のメンバーと共に


ウッズホール海洋研究所のRedfieldキャンパス