2019年7月1日(月)~2日(火)にカナダ・ケンブリッジベイのCHARS(カナダ極北研究ステーション)で「Canada-Japan Future Collaboration Workshop on Arctic Environment based at Canadian High Arctic Research Station (CHARS) Campus」(※英語ページ)と題するワークショップを実施しました。このワークショップは、ArCS国際連携拠点のひとつでもあるPOLAR(カナダ極地知的基盤機構)(※英語ページ)と共同で、カナダ・ヌナブト州ケンブリッジベイの周辺地域における日本・カナダの共同研究について情報交換するとともに、現地住民も含めた両国の協力体制を強化することを目的として開催されました。
ワークショップは1) 研究者のみによるビジネスミーティング, 2) 現地住民向けのコミュニティサイエンスミーティングの2部構成で行われました。ビジネスミーティングには約25名が参加し、進行中あるいは構想中の共同研究について日本・カナダ双方から合わせて12件の発表があったほか、4グループに分かれて今後の研究計画について議論を行いました。CHARSの施設見学も行われ、最新の分析施設や北極域の生活環境の改善に対する科学と技術の導入とそれを使った利用モデルとデモンストレーションを行う構想が理解できました。
7月2日の夕方からはケンブリッジベイの住民向けに日本の研究について説明し、地域に住む人の意見を聞くことを目的とするコミュニティサイエンスミーティングを行いました。ミーティングには家族連れも含む約50名の参加がありました。研究者が写真や図を多用してできるだけわかりやすく研究を説明したのに対し、住民からは想像以上に熱心な質問や発言があり、変わりつつある環境に対応するため、日本の研究者との協力を含め、自分たち自身も改善に向けた活動が必要との意見も聞かれました。ミーティングは予想以上の成果をあげました。
南極と異なり、人々が暮らす北極域での研究観測活動には、現地住民の声を聴き、その地域の社会の仕組みを考慮した協力が不可欠です。今回のワークショップは、CHARSの運営主体であるPOLARの協力もあり、多くの住民から高い関心を得る貴重な機会になりました。ビジネスミーティングにも、行政機関や地域の代表者、地域の文化や経験利用活動のリーダーの参加があり、日本とカナダの共同研究に強い関心を示しました。彼らはどのように最新科学や技術と先住民の知識(Indigenous Knowledge:IK)がつながっていくのかに高い関心を持っています。今回の会合がカナダ北極域における今後の研究の推進するものとなることを期待します。
榎本 浩之(国立極地研究所/国際連携拠点の整備メニューPI)