北西航路観測チーム 観測便り

他船救助(2012.7.27)

現在地:カナダ・ランカスター海峡(北緯74度37分、西経91度15分)

チームメンバー:山口一(東京大学)、柴田啓貴(北見工大)

巨大氷山と海氷

前夜のうちに部分海氷域に入り、レゾリュートの近くまで来たが、27日朝に海氷により行き場を失った他船より救難信号が入り、ランカスター海氷を東に戻る。海氷は少ないが氷中航行になっているので、昼過ぎにブリッジから氷況目視観測の練習をさせて貰った。13:30頃に救助する船に到着する。長さ70mくらいの観測船(漁船かもしれない)。氷に閉じ込められたという訳ではなく、周囲に少し多めの氷、大きめの氷盤達があり、行き場を無くしたという模様。船の近傍にはむしろ氷は無い。そういう所で停泊して、救援を待っていたということであろう。

ルイサンローランはこの船を左舷に見ながら船の周りを一周して動き易くし、その後、後ろに従えてエスコート航海をし始めた。通常の航海では、ブリッジの担当は、航海士と操舵手の2名であるが、エスコート航海では航海士が後ろの船を見張るため、前方を見るためのワッチが一人増える。ルイサンローランはAir Bubbling Systemを作動させ、自分の航跡中の氷片を少なくして、エスコート船が航行し易くなる様にしながら、注意深くゆっくりとレゾリュートに向かって進み出した。

19時頃から氷密接度4-6程度の部分海氷域に入ったので、氷中観測とブリッジでの氷況目視観測を再開した。途中、ホッキョクグマが海氷の間を泳ぎ、その後海氷に這い上がった姿を見たが、遠くであり、船に近付いては来なかった。21:28、海氷域を抜けたので、氷況観測終了。レゾリュートの手前である。エスコートされていた船は、ここでルイサンローランにお礼を言って、離れて行った。

救助する船の周りをぐるりと回っている所。

エスコート航海の開始。

ランカスター海峡北側のDevon島。レゾリュートの近く。