北西航路観測チーム 観測便り

海氷観測とホッキョクグマ(2012.7.28〜29)

現在地:カナダ・ビクトリア海峡北端(北緯69度58分、西経99度26分)

チームメンバー:山口一(東京大学)、柴田啓貴(北見工大)

高度約650mから見た海氷域

28日は15:30頃までレゾリュートの近くに停泊していた。観測の都合ではなく船の都合のため。今年はレゾリュートの周囲には全く海氷が無かった。我々観測チームは、その間に調子の少し悪い機器の調整などをすることができた。

船は28日15:30頃にレゾリュート近くで抜錨した後、ピール海峡、フランクリン海峡を通り、ビクトリア海峡北端付近の密接度6-8程度の海氷域中で停止した。この停泊も、観測の都合でも無ければ船が氷に閉じ込められたのでもなく、単に船の都合による。

高度約600mから見た別の海氷域。写真中央少し下のモスラの紋章の如き融解は、どうして起きたのだろう。

船の近くまで来たホッキョクグマ3頭。歩き回ったので、氷の上に一杯の足跡。

船の近くで立ち上がってくれた芸達者なホッキョクグマ。

29日午前中に船の氷観測員によるヘリ観測に同乗することができた。ヘリは9:40に出発し、これから通る南側の海氷状況を観測した後、11:11に帰還した。

29日13:15頃から氷中航行が始まったが、船のイベント対応のため、まだブリッジでの氷況目視観測には入れない。海氷域用計測機器による計測は、開始した。13:30頃に左舷遠くにホッキョクグマ3頭が現れたため、見物のため1時間程停止。この熊達は船のすぐ近くまで来てくれたので、甲板には一杯人が出て来た。母親と子熊2頭であろう。

船のイベント対応が15:50に終了しため、16:00からブリッジでの氷況目視観測を始めた。この観測は、船が停止する20:30まで継続した。途中、18:40-19:00に右舷から一頭のホッキョクグマ、続いて左舷から一頭のホッキョクグマが来たので、見物のためまた停止。この二頭の熊は単独行動なのでどちらも雄であろう。左舷から来た熊は船のすぐ近くまで来て、立ち上がったりしてくれた。好奇心の強い若い熊かも知れない。

氷中航行開始時は薄曇りであったが、19:00頃から晴れた。氷密接度は6-8程度。後半は大きめの氷盤が増えて来たので船速が9knot程度に落ちたが、前半は11knot程度で、快調に進んでいる。氷厚は1m程度の一年氷が中心であるが、殆どの氷がラフティングしており、氷況は複雑。厚い所は3mを越えるのもあった。融解が進んだ氷で、グズグズである。